Career shift

池田信太郎 / Ikeda Shintarou   元バドミントン選手|現在:

アスリートの経験を活かし、ビジネスパーソンとして 成長していきたい 元バドミントン日本代表・池田信太郎(前編) 2019.4.15

Profile

 

池田信太郎(いけだ・しんたろう)
1980年生まれ。福岡県出身。5歳からバドミントンを始める。筑波大学→日本ユニシス株式会社→株式会社エボラブルアジアに所属。2006年&2008年全日本総合選手権優勝(男子ダブルス)、2012年全日本総合選手権優勝(混合ダブルス)。2007年に開催された世界選手権では日本男子初のメダルを獲得。2008年北京オリンピック出場。2009年に日本人初のプロ契約を締結。同年に混合ダブルスに転向し、2012年ロンドンオリンピック出場。2015年9月に現役を引退し、現在はフライシュマン・ヒラード・ジャパン株式会社でシニアコンサルタントとして活躍。世界バドミントン連盟アスリートコミッションメンバー。東京2020オリンピック、パラリンピック組織委員会ACメンバー。

小松:
今回は元バドミントン日本代表の池田信太郎さんにお話を伺います。池田さんは2007年に世界選手権の男子ダブルスで日本人初のメダル(銅)を獲得。2008年の北京、2012年のロンドンと2大会連続でオリンピックに出場なさった名選手です。

東:
2009年にバドミントン選手としては日本人初のプロ契約を締結。同年に結成した女子バドミントンの人気選手・潮田玲子さんとの混合ダブルス“イケシオ”は大きな注目を集めました。

小松:
バドミントン界のパイオニアとして長く活躍なさってきた池田さんですが、引退後はビジネスの世界でも大活躍。フライシュマン・ヒラード・ジャパンでシニアコンサルタントを務めながら、複数の有名企業の顧問もなさっておられます。

東:
フライシュマン・ヒラードはアメリカのセントルイスに本拠を置く世界最大級のコミュニケーションコンサルティング会社で、事業の目標達成に企業とともに取り組む会社です。

小松:
また、トップアスリートのキャリアを生かし、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会のアスリート委員のメンバーも含めて幅広い活動にも従事なさっていますね。

東:
現在の池田さんの活動を“その後のメダリスト100 キャリアシフト図”に当てはめると、フライシュマン・ヒラード・ジャパンや企業顧問は「C」、東京オリパラ組織委員会のお仕事は「B」、解説者やキャスターなどは「D」とそれぞれの領域でご活躍なさっていることが分かります。

小松:
バドミントンの競技スキルや競技団体と最も近い「A」の領域以外でのお仕事をなさっているのですね。

注1)親会社勤務とはいわゆる企業スポーツである実業団チームで自らが所属していた企業で一般従業員として勤務していること
注2)親会社指導者とはいわゆる企業スポーツである実業団チームで自らが所属していた企業の指導者を務めていること
注3)プロパフォーマーとはフィギュアスケート選手がアイスダンスパフォーマーになったり、体操選手がシルク・ドゥ・ソレイユのパフォーマーとして活動していること
注4)親会社以外勤務とは自らが所属していた実業団チームを所有している企業以外で一般従業員として勤務していること

 引退後にもドラマチックな人生を

東:
選手を引退なさった後も様々な領域でご活躍の池田さんですが、現役の頃から将来についてのビジョンをお持ちだったのでしょうか?

池田:
特に明確なビジョンがあったわけではありませんが、引退してもドラマチックな人生を送りたいとは思っていました。

小松:
ドラマチックな人生、ですか?

池田:
はい、単にお金を稼ぐための仕事をするのではなく、オリンピックに負けないくらいの何かを見つけて、常に追いかけていたいという気持ちがありました。人生をかけてオリンピックを目指し、過ごしてきた日々は精神的にも肉体的にも本当に大変でしたが、最高に充実していたので。引退後もオリンピックに負けないような目標を見つけ、それを達成するために頑張りたいと思っていました。

東:
オリンピックを目指すようなトップアスリートの多くが同じような考えを抱きながらも、なかなかオリンピックに負けないような目標を見つけられずに悩んでいるように感じますが、池田さんは引退後、すぐに新たな目標を見つけられたのでしょうか?

池田:
そうですね、比較的スムーズに見つけられたように感じます。

小松:
池田さんがあまり悩まずに済んだ理由は何でしょうか?

池田:
そうですね、まずはプロ選手として活動していく中で、自らの価値を企業へ売り込み、対価を得るということを経験していたということが大きいのと、大学生の頃からビジネスマインドを持っていたことが挙げられると思います。Yahoo!オークション(現ヤフオク!)が流行った時にも単にオークションを楽しむのではなく、これから物流の革命が起きるのだと受け止めて、今後、運送会社が利益を拡大していくだろうけれども、国の規制次第だな・・・と考えてみたり。今思えば、様々な出来事をビジネス的に見る習慣がついていましたね。

小松:
慧眼ですね。そのような視点は、いつ、どのように養われたのでしょうか。

池田:
読書です。起業家の方の物語が好きで、ビジネス書を読んでいた影響が大きいと思います。

東:
ビジネス書や経済誌を読むトップアスリートは珍しいですよね。読書をする場合にもスポーツノンフィクションやエッセイ、小説が多いと思います。もちろん、小松さんの作品は多くのアスリートが愛読しています。

小松:
光栄です(笑)ビジネスの視点を持って物事を考える以外に、心がけていたことはありますか?

 出来ないを理由に挑戦しなければ、いつまでも出来ない

池田:
依頼されたお仕事はなるべく断らないようにしていましたね。例えば、畑違いのテーマで講演してくださいと依頼され、ファーストインプレッションで「面倒だな、やりたくないな」と感じたとしても、これが出来れば自分のキャパシティが大きくなる、成長出来ると判断すれば、受けていくことを意識していました。

東:
これまでにやったことがなくて出来ないことを、出来ないからといって挑戦しなければいつまでたっても出来ないままですからね。スポーツでもビジネスでも失敗を恐れずに挑戦することで、失敗と成功を繰り返しながら少しずつ出来るようになっていくものですが、一度頂点を極めたトップアスリートは失敗することを恥ずかしく思い、なかなか挑戦出来ないことが多いようにも感じます。

小松:
新たな世界で挑戦する時には、最初は失敗して当然ですよね。とてもスマートな印象のある池田さんですが、失敗したことはあるのでしょうか?

池田:
もちろんありますよ(笑)事業内容を説明するためにパワーポイントで作った資料がプレゼン当日にパソコンから消えてしまった事もありましたし、資料の印刷を忘れていて、焦ってキンコーズで印刷したら高級用紙で大金がかかり、泣きそうになったりとか(笑)

東:
そうなんですね!池田さんが焦ったり取り乱したりする姿を見たことがないので、意外です(笑)

小松:
色々なご経験をなさったからこそ、今があるのですね。

 自分ならではの“バリュー”を“対価”に変える

東:
改めて現在の池田さんのなさっているお仕事を整理するとどうなるでしょうか?複数の企業に関わっていらっしゃいますよね?

池田:
最も時間を使っているのはフライシュマン・ヒラード・ジャパンでのシニアコンサルタントで、エボラブルアジア、エアトリ(旧DeNAトラベル)、AuB、ITOKINでは顧問を、2019年3月20日にオープンする(取材は2019年1月28日に実施)GAP認証レストラン・グランイート銀座ではプロジェクトディレクターを務めています。

小松:
改めて伺うとものすごい数ですが、どのような働き方をなさっているのか具体的にお聞かせ願えますか?

池田:
フライシュマン・ヒラード・ジャパンでは、事業戦略やPRストラテジーを考え、それぞれにマッチしたソリューションを提供し、事業の目標達成に企業とともに取り組んでいます。様々なパートナーとともにクライアント企業の持っているアセットを顕在化させ、長期的なプランでPRするための広告やイベントを企画して、世論形成していくのが仕事です。
その他の企業では僕のバリューに対して価値を感じていただき、顧問としての対価を支払っていただいています。

東:
僕も池田さんと同じく、元サッカー日本代表の鈴木啓太さんが代表を務める腸内細菌解析ならびに関連製品開発事業等をおこなっているAuBで顧問を務めていますので、会議などでご一緒するのですが、池田さんの幅広い知見とシンプルかつクリティカルな提案にはいつも驚かされています。いつ頃からこのようなスキルを身につけられたのでしょうか?

池田:
いえいえ、まだまだ成長出来ると思っていますが、プロ選手として活動資金を調達するため様々な企業に営業をしていた際に、様々な企業の経営者と交流を持たせていただき、その中で徐々に自分の価値や提供できるソリューションに気づいていきました。

小松:
経営者は孤独な存在でもあるので、高い目標に向かい自己研鑽を重ね、結果を残してきたトップアスリートに対して敬意を払い、信頼なさるのでしょうね。

東:
同感です。僕も現役選手の頃からハンドボール経験者の経営者や、同郷である石川県出身の経営者との交流を通じて学んだことが現在の仕事に活きていますし、人は“これが出来ます!”より“これをやってきました!”を信用しますので、アスリートには強みがあると思います。

小松:
これをやってきました、ですか?

東:
はい、アスリートとしての経験や実績を“一生懸命頑張ってきたので、ハンドボールがとても上手です!”と定義するのではなく、“高い目標を設定して、それを達成するための努力を継続し、数々の挫折を克服しながら日本を代表する実力を獲得し、世界の舞台で戦ってきました!”とすれば、人として信頼されるスキルになりますし、それこそがトップアスリートの持つコア・バリューなのだと思います。

小松:
なるほど、競技の実力や成績ではなく、積み重ねてきたプロセスをバリューにするということですね。

東:
池田さんは、選手時代にスポンサーだったエボラブルアジアがDeNAトラベルを買収する際に、エボラブルアジアの大石崇徳会長と以前から交流のあったDeNAの南場智子会長を直接お繋ぎし、エアトリの誕生に大きく貢献なさるなど、ご自身のバリューを活かして、他の人にはなかなか真似の出来ないような働き方をなさっています。

小松:
それは素晴らしい業績ですね!顧問を務めていらっしゃる他の企業でも、ご自身のパーソナリティーや繋がりを活かして、バリューを発揮なさっているのでしょうね。

東:
以前にエボラブルアジアとエアトリの会長を兼務なさっている大石会長とご一緒させていただいた際にも、池田さんのおかげで本当に助かっているとお話なさっていました。

池田:
それは嬉しいですね。アスリートとしてのスキルやスポーツ界や経済界における人脈をどのようにクライアント企業の利益に繋げるかが、顧問として求められていることだと思いますので。

小松:
自らにどのようなバリューがあり、何に対価が支払われているのかを理解することはビジネスパーソンにとっても重要なことですよね。
グランイート銀座のプロジェクトディレクターはどのようなお仕事なのでしょうか?

池田:
グランイート銀座は、農業において食品安全・環境保全・労働安全などの持続可能性を確保するための生産工程管理の取り組みである「GAP(Good Agricultural Practice:農業生産工程管理)」の認証を受けた食材をライブキッチンスタイルで提供するビュッフェダイニングです。
GAPはオリンピック・パラリンピックの食材調達基準にもなっており、こちらをクリアしなければ選手村などで国産農産物が十分に提供出来ないのですが、高い審査料や厳格な生産管理が求められることもあり、2017年時点で大会組織委員会が定めた認証の取得率が約1%(約4500農家)と危機的な状況でした。そこで、認定NPO法人GAP総合研究所代表理事でグランイート銀座プロジェクト総合プロデューサーを務める武田泰明さんとともにオリンピアンとしての経験や知見を活かして、プロジェクトに関わっています。

東:
2020年の東京オリパラは単なる国際スポーツ大会ではなく、日本を国際的にPRする場でもありますから、国産農産物を使用した“和食”をトップアスリートを始め世界中の方々に味わっていただく機会を逃してはもったいないですよね。

池田:
僕が出場した2012年のロンドン大会の選手村では英国産の食材が提供出来ず、輸入品に依存したということもありましたので、東京では同じ轍を踏まないようにと国や自治体が審査料を助成するなどの後押しをしています。

東:
1964年の東京大会では、国立競技場を始めとする競技場、東海道新幹線や首都高速道路などの交通機関、数々の宿泊施設などのインフラが整備され、カラーテレビが普及するなどの大きな変化がもたらされました。2020年の東京大会は、英語やその他の外国語を含めた様々なバリアフリー環境や観光施設に加えて、安全で美味しい国産農産物や和食文化を海外に届けるための環境が整備されると良いですよね。

池田:
はい、オリパラは国民一丸となって様々な社会課題を解決するための千載一遇の好機だと思いますので。

東:
本当にそう思います。このインタビュー企画でも、セカンドキャリアで活躍しているアスリートの情報をシェアすることで、社会で活躍出来る人材を増やし、労働人口減少という社会課題の解決に貢献したいと考えています。

小松:
トップアスリートとして培ったスキルと幅広い人脈を活かし、様々な企業でご活躍なさっている池田さん。次回はバドミントン選手としての経験にフォーカスしてお話を伺っていきます。

東:
池田さんが現役時代にどのようなことを考え、どのような行動をとっていたのか。そして、それがその後の人生にどう繋がり、活かされていくのか。お話を伺うのが楽しみです!
(つづく)

 

編集協力/設楽幸生

インタビュアー/小松 成美 Narumi Komatsu
第一線で活躍するノンフィクション作家。広告会社、放送局勤務などを経たのち、作家に転身。真摯な取材、磨き抜かれた文章には定評があり、数多くの人物ルポルタージュ、スポーツノンフィクション、インタビュー、エッセイ・コラム、小説を執筆。現在では、テレビ番組のコメンテーターや講演など多岐にわたり活躍中。

インタビュアー/東 俊介 Shunsuke Azuma
元ハンドボール日本代表主将。引退後はスポーツマネジメントを学び、日本ハンドボールリーグマーケティング部の初代部長に就任。アスリート、経営者、アカデミアなどの豊富な人脈を活かし、現在は複数の企業の事業開発を兼務。企業におけるスポーツ事業のコンサルティングも行っている。

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