Career shift

岡田友梨 / Okada Yuri   元女子レスリング選手|現在:

“好き”と“やりたい”を突き詰める 元女子レスリング日本代表・岡田友梨(旧姓甲斐)(前編)

Profile

 

岡田友梨(おかだ・ゆり)
1984年生まれ。滋賀県出身。元レスリング日本代表。人生の20年間を格闘技(柔道・レスリング)に没頭。鍛えた肉体を美しく見せる服をつくるために選手時代から素材や着こなしを研究し、引退後起業。筋肉のボリューム対策と着痩せに特化した女性用アパレルブランド「KINGLILY(キングリリー)」を取り扱うKINGLILY株式会社の代表兼デザイナー。企画からデザイン、訴求、販売までを自社で行う。着痩せテクを得意とし、専用インスタグラムはフォロワー7万人を突破。着痩せの情報交換と交流に特化したオンラインサロンは立ち上げから1年半、毎月約150名が所属し運営中。着痩せ監修の企業オファーも個人で受けている。座右の銘は「強く、美しく」「YES I CAN」。死ぬまでの目標は、アスリートのセカンドキャリアのロールモデルの一人になることと、自分の意思や価値観で自分の生きがいややりがいを決められる大人を一人でも多く増やすこと。

東:
様々なアスリートの現役を終えた“その後の人生”に迫るインタビュー連載“表彰台の降り方。〜その後のメダリスト100〜”。今回は元女子レスリング日本代表・岡田友梨(旧姓甲斐)さんにお話を伺います。

小松:
岡田さんは2007年に開催されたワールドカップ個人48kg級や、2009年のオーストラリアオープンで優勝。同年の全日本選手権では伊調千春選手をやぶって初優勝するなど数々の国内・国際大会でご活躍なさってきたトップアスリートです。

東:
現役引退後、現在はアスリートとしての経験を活かして、筋肉のボリューム対策と着痩せに特化したアパレルブランドを展開する“KINGLILY(キングリリー)株式会社”を立ち上げ、同社の代表取締役兼デザイナーとしてご活躍なさっています。

小松:
現在の岡田さんの活動を“その後のメダリスト100キャリアシフト図”に当てはめますと、“KINGLILY”の経営者兼デザイナーということで「C」の領域でご活躍なさっているということですね。

東:
また、不定期で実施なさっている地域の小学生に向けたレスリングの体験教室の講師が「A」の領域、講演の講師が「D」の領域と、活動の柱を経営者におきながらも幅広い活動をなさっていることが分かりますね。

注1)親会社勤務とはいわゆる企業スポーツである実業団チームで自らが所属していた企業で一般従業員として勤務していること
注2)親会社指導者とはいわゆる企業スポーツである実業団チームで自らが所属していた企業の指導者を務めていること
注3)プロパフォーマーとはフィギュアスケート選手がアイスダンスパフォーマーになったり、体操選手がシルク・ドゥ・ソレイユのパフォーマーとして活動していること
注4)親会社以外勤務とは自らが所属していた実業団チームを所有している企業以外で一般従業員として勤務していること

小松:
ご自身が取り組んでこられた“レスリング”とは全く異なる領域でもご活躍なさっている岡田さんの“表彰台の降り方”、どのようなお話が伺えるのか非常に楽しみです。

 好きなだけではいられない“本物”の領域

小松:
東さんと岡田さんとはご面識があるそうですが、初めてお会いしたのはいつだったのでしょうか?

東:
2018年に日本スポーツ振興センターが主催したアスリートのキャリア課題の解決に役立つ国内外情報、公的機関・民間企業の取り組み、研究成果などを一元的に集約した総合コンベンション「アスリート・キャリア・トーク・ジャパン2018」というイベントにお互い登壇者として参加した際にご挨拶させていただいたのが最初ですよね?

岡田:
そうですね。ただ、私はとても人見知りなので、その時には名刺交換出来ませんでした。私はオリンピックに出場していないことにコンプレックスがあって、他のアスリートと上手く交流出来ない部分があるんです。

小松:
いえいえ、ワールドカップを始め国際大会や、世界一のレベルを誇る国内大会でも優勝なさっていますし、素晴らしいご実績でコンプレックスを持つ必要なんて全く無いと思います!

岡田:
私の周りには吉田沙保里さんや伊調馨さんをはじめ金メダリストがゴロゴロいまして、そういう選手たちと比べると周囲の人たちの見る目も違いますし、私はオリンピックにチャレンジしたけれども負けてしまった選手なのだという思いが強くて・・・

東:
レベルは違うのですが、岡田さんのお気持ち、僕も分かる気がします。ハンドボールは男子に関しては1988年に開催されたソウル大会以降ずっとオリンピックに出場出来ておらず、僕自身についてはオリンピックはもちろん世界大会にも一度も出場した経験が無いので、オリンピアンに対しては、憧れとある種の引け目を感じる部分があります。オリンピアンになれるかどうかは、アスリートのその後の人生を分かつ分岐点の一つにはなりますよね。

小松:
応援している側とすれば全然そんな風には思わないのですが、アスリートの中ではオリンピアンであるかどうかで違いを感じる選手もいらっしゃるのかも知れませんね。

岡田:
レスリング以外の世界の方々には“すごい!”とも言われますが、私は本当にすごい人たちを一番間近に見て来たので、みなさんが思っている”すごい”と、”本物のすごい”は違うと思ってしまって、素直には受け入れることが出来なくて。

小松:
やはり、オリンピックへの思いは強かったのでしょうか?

岡田:
オリンピックへの思いというか、私はレスリングそのものが大好きで競技を続けてきたんですね。多くの選手は試合で結果を出すために練習に取り組むのだと思うのですが、私の場合はとにかくレスリングが大好きで、どんなにきつくても毎日練習出来ること自体が幸せだったんです。

東:
なるほど。試合に勝利して、オリンピックに出場するためではなく、ただただレスリングが大好きで練習をしていたのだと。

岡田:
そうなんです。ただ、レスリングそのものが好きすぎて、人よりも多く練習することが全く苦ではないので、続けていくとある程度の成績を残せるようになってきます。すると、周りは更に上の領域である“オリンピック”や“メダル”を求めるようになっていきますし、私自身も「オリンピックを目指しています」と言わざるを得ない状況になっていったんです。

小松:
確かに周りの方々としてみれば、こんなに強い選手なのだから、当然オリンピックでの活躍を目指しているのだろうと思い、期待してしまうのも仕方ないのかも知れません。

岡田:
国内大会で優勝したり国際大会でメダルを獲ることが続くと、必然的に次に目指す舞台は“オリンピック”しかないですから、そこを目指すのが当然ですし、それしか答えはないのですが、私にしてみれば、大好きなレスリングに“勝たなければいけない”、“期待に応えなくてはならない ”という要素が入ると、それらを背負ってしまい、期待の“重さ”を感じたり、試合に臨む“怖さ”を感じるようになってしまって・・・

東:
周囲の期待に応え続けるのが、トップアスリートの宿命で、結果を残せば残すほど、単に“好きなだけ”では続けられない領域に入っていくわけですが、日本のトップ=世界のトップという女子レスリングの世界ではその期待の重さや負けることに対する“怖さ”も想像を絶するものだったでしょうね。

小松:
現在でもレスリングの練習はなさっているのでしょうか?

岡田:
いえ、たまに地域の小学生に体験指導をするくらいで、全然です。

東:
本業のほうがお忙しいですものね。

 強く美しい女性のために

小松:
続いて、現在のお仕事について聞かせてください。

岡田:
アスリートなど鍛えた肉体を始め体型に悩みを持つ女性に特化した洋服ブランド「KINGLILY」を取り扱うKINGLILY株式会社を経営しています。

東:
“KINGLILY”というブランド名の由来を教えてくださいますか?

岡田:
“LILY”は英語で花の“百合(ゆり)”で、私の名前の“友梨(ゆり)”が由来です。また、女性向けブランドなのになぜ“QUEEN(クイーン・女王)”ではなく、“KING(キング・王様)”なのかとも聞かれるのですが、私は戦っている時の自分がとても男性的で、そこが美しいと思っていたので、“QUEEN”というよりも“KING”のほうがブランド名としてしっくり来るなと。“KING”を目指す女性たちのために、強く美しくなれる洋服をつくりたいという思いを込めた社名であり、ブランド名が“KINGLILY”なんです。

小松:
とても素敵な思いが込められたお名前なんですね。会社を立ち上げられたのはいつ頃なのでしょうか?

岡田:
2015年の10月に会社を立ち上げ、服を作りはじめて、販売をスタートしたのが2016年の4月です。

東:
“KINGLILY”の洋服と他の洋服では、どのような違いがあるのでしょうか?

岡田:
アスリートは二の腕や太ももがすごく太かったりしますので、一般的なスリーサイズの意味がなくて、普通の人のサイズに合わせると洋服がまったく合わないんです。

東:
わかります!私も現役時代は太ももとお尻に合わせたかなり太めのパンツを選ばざるを得なかったので、全体的にルーズなファッションしか出来ませんでしたし、気に入った洋服を着られずに残念な思いをすることも多かったです。結局ジャージが一番似合うというか、楽だという結論になってしまいますよね。

岡田:
アスリートの鍛え上げられた肉体はとても美しいものですが、通常の洋服では一番太い部分に合わせるとルーズなファッションをしなければいけないので、美しいボディラインが消えてしまうんですよね。現役時代、それが私はすごく嫌だったんです。自分のウエストのくびれだったり、ぐっと張り出た肩の筋肉とか大好きだったんですけど(笑)

小松:
鍛え上げられたアスリートの肉体にはギリシャ彫刻のような美しさがありますものね。そういったご自身の経験を踏まえて、女性アスリートの美しいボディラインを生かせるような洋服を作って販売する事業を立ち上げられたのですね。

東:
落ち着いたら、男性アスリート向けのブランドも是非立ち上げていただきたいです!

 アスリートだって、オシャレしたい!

東:
岡田さんは2011年8月に現役を引退なさったわけですが、2015年の10月にKINGLILYを立ち上げられるまでのお話を聞かせていただけますか?

岡田:
引退後、自分にしか出来ない仕事をしたいと考えて、現役時代に所属していたアイシン・エィ・ダブリュを退職し、アルバイトをしながらファッションデザインの専門学校に通いました。

小松:
レスリングとファッションデザインは全く異なる業界だと思いますが、どうして専門学校で学ぼうと考えられたのでしょうか?

岡田:
高校生の頃から洋服が大好きでずっとオシャレをしたいと思っていたのですが、一般の女性に比べると肩や腰に筋肉がモリモリ付いているので、似合うデザインやサイズがないというか、普通の洋服が着られないという悩みがずっとあって。レスリングを引退して、この先の人生で、自分が何をやりたいのかを考えた時に、女子アスリートはみんな同じような悩みを抱えているのではないかと思い「女子アスリートのためのファッションブランドを立ち上げよう!」とひらめいたんです。昔から絵を描くのが好きで模写も得意だったので、勉強すればデザイン画も描けるようになるはずだと思い、専門学校に行くことにしたんです。

東:
安定した大企業での立場を捨てて、アルバイトをしながら全く別のジャンルを一から学ぶとは、ずいぶんと思い切ったチャレンジですよね・・・周囲の方から反対されなかったのでしょうか?

岡田:
事前に相談すれば反対されると思ったので、誰にも言わずに決めました。

小松:
ものすごい勇気と意志の強さですね!
専門学校でファッションデザインについて学んだ日々はいかがでしたか?

岡田:
結果的にはあまり意味がありませんでした(笑)

東:
ええ?! 意味がなかったとは、どういうことでしょうか?

岡田:
私はなりたかったのは“ファッションデザイナー”だったのですが、私の入学した専門学校は洋服を“デザイン”するのではなく、洋服を“つくる”ための勉強をするところだったんです。私はこういう洋服をつくってくださいと指示を出す人になりたかったのですが、学校は実際につくる人になるための場所なので、当時二十七歳の私が二十歳位の子達に混ざって、ゼロから縫製の勉強をするんですが、めちゃめちゃ下手で心が折れまくってしまって(笑)全然楽しくないんですけど、基本的な知識と技術は身につける必要があると思って、渋々通っていました。

小松:
なるほど、岡田さんの目的に沿った学校ではなかったのですね。楽しいことはなかったのですか?

岡田:
デザイン画の授業はとても楽しかったです。普通、専門学校で習うデザイン画は八頭身や九頭身の細い女性が着る洋服を描くのですが、私はこういう人たちのための洋服をつくりたいわけではないので、最初はそういうデザインをやっていても全くモチベーションが上がらなくて。なので、「私は肩にも二の腕にも背中にも筋肉がムキムキついていて、お尻がボーンと出ている人でも体のラインが美しく見える服のデザインがしたい」と先生に直談判したんです。

東:
目的に沿わず、やりたくないことを我慢してやり続けるのではなく、目的に沿ったことをやるために交渉なさったわけですね。結果はいかがでしたか?

岡田:
あっさり「いいよ」と言ってくれました(笑)
その授業だけは楽しくて、課題に対して三倍くらいのデザイン画を提出していましたね(笑)

小松:
好きなこと、やりたいことに対しての努力の量がすごいですね。
デザイン画から、次はパターンをつくっていくのですよね?

岡田:
そうなのですが、パターンの授業は面白くないのでサボっていました(笑)私はデザインだけして、他の工程はプロに依頼すればいいと考えていたので。それからしばらくして、ある出来事をきっかけに学校に行くのをやめました。

東:
どんな出来事があったのでしょう?

岡田:
繊維や布について学ぶ授業があったのですが、全く興味が持てなくて。私は細かいことは専門家に聞けばいいし、自分が学校でゼロから習う必要はないと思っていて、授業中に携帯をいじっていたら、先生にメチャメチャ怒られて。「あなた失礼だからもう出て行きなさい!楽しくないならやらなくていい!」と言われたんです。

小松:
先生の立場にしてみれば、当然の反応ですよね。

岡田:
おそらく、先生は私の将来のことを考えて「ちゃんと勉強しなさい!」という意味で叱ってくれたのだと思うのですが、私はその時「確かに!楽しくないことに時間を費やして、一体何をしてるんだろう?」と気づいて、それから学校に行くのをやめたんです(笑)

東:
最高ですね(笑)やりたいことをやるために大企業を退職して、アルバイトをしながら学校に通っているはずなのに、やりたくないことを勉強していたら時間がもったいないですものね。

小松:
自らのやりたいことに正直に、好きなことには全力で取り組むことの出来る岡田さんは、この後紆余曲折を経て、自らの夢を叶えるためのブランド“KINGLILY”を立ち上げられるわけですが、次回は少し時計の針を巻き戻して、レスリングとの出会いから現役時代のお話について伺ってまいりたいと思います。

東:
岡田さんがレスリングを通じて、どのような出会いや経験をして、現在のパーソナリティーを形成なさってきたのか。とても楽しみです!

岡田:
宜しくお願いします。
(つづく)

次回「“最強”で“最高”な先輩との日々」(中編)は、7月3日公開!

 

編集協力/設楽幸生

インタビュアー/小松 成美 Narumi Komatsu
第一線で活躍するノンフィクション作家。広告会社、放送局勤務などを経たのち、作家に転身。真摯な取材、磨き抜かれた文章には定評があり、数多くの人物ルポルタージュ、スポーツノンフィクション、インタビュー、エッセイ・コラム、小説を執筆。現在では、テレビ番組のコメンテーターや講演など多岐にわたり活躍中。

インタビュアー/東 俊介 Shunsuke Azuma
元ハンドボール日本代表主将。引退後はスポーツマネジメントを学び、日本ハンドボールリーグマーケティング部の初代部長に就任。アスリート、経営者、アカデミアなどの豊富な人脈を活かし、現在は複数の企業の事業開発を兼務。企業におけるスポーツ事業のコンサルティングも行っている。

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