Career shift

上原大祐 / Uehara Daisuke   元パラアイスホッケー選手|現在:

すべての人には「役割」がある 元パラアイスホッケー日本代表・上原大祐(前編)

Profile

 

上原大祐(うえはら・だいすけ)
1981年長野県生まれの元日本代表パラアイスホッケープレーヤー。トリノ、バンクーバー、平昌の3大会パラリンピックに出場し、2010年バンクーバーパラリンピックでは、準決勝のカナダ戦で決勝ゴールを決め、銀メダル獲得に貢献。
引退後はNPO法人D-SHiPS32を立ち上げ、大好きな子供達にスポーツを届けたり、自分が嫌だと思った事を次世代に残さないように商品開発などのアドバイザーとしても活動をしている。また、選手として支えられてた側から支える側として活動したく、HEROsアンバサダーや各地で新しい取り組みに力を入れている。

東:
今回のゲストは、元パラアイスホッケー日本代表の上原大祐さんです。パラアイスホッケーとは、「スレッジ」と呼ばれるソリに乗り、両手に持ったスティックを巧みに操り、激しいぶつかり合いの中パックを奪い合いゴールを目指す、まさしく氷上の格闘技です。

小松:
19歳で競技と出会った上原さんは2006年・トリノパラリンピックに初出場。2010年のバンクーバーパラリンピックでは準決勝のカナダ戦で価千金の決勝ゴールを決め、銀メダル獲得に貢献。ソチパラリンピック出場権を逃し、2014年に現役引退を発表するも、2017年、平昌パラリンピック最終予選を前に電撃的に現役復帰。予選突破に大きく貢献し、2018年の平昌パラリンピックで再び栄光の舞台に立つ、という競技人生を歩んでこられました。

東:
今回は、そんな上原さんの現在、そしてこれからのキャリアを多角的に伺いたいと思います。
現在の上原さんの活動を“その後のメダリスト100 キャリアシフト図”に当てはめると、NECオリンピック・パラリンピック推進本部でのパラスポーツ推進活動やインクルーシブデザインを取り入れた商品のアドバイザーは“B”の領域、2014年に立ち上げ、船長(代表)を務めるNPO法人D-SHiPS32(ディーシップスミニ) での障害をもつ子供のサポートや講演、パラアイスホッケーに触れてもらうための「スポーツキッズキャンプ」など“C”の領域でもご活躍なさっていますね。

小松:
東さんと同じく、アスリートによる社会貢献活動を推進する日本財団HEROsのアンバサダーも務めていらっしゃいます。

注1)親会社勤務とはいわゆる企業スポーツである実業団チームで自らが所属していた企業で一般従業員として勤務していること
注2)親会社指導者とはいわゆる企業スポーツである実業団チームで自らが所属していた企業の指導者を務めていること
注3)プロパフォーマーとはフィギュアスケート選手がアイスダンスパフォーマーになったり、体操選手がシルク・ドゥ・ソレイユのパフォーマーとして活動していること
注4)親会社以外勤務とは自らが所属していた実業団チームを所有している企業以外で一般従業員として勤務していること

 どんな人にも役割がある

東:
パラアイスホッケー選手を引退された現在、どんな活動をされているのですか?

上原:
現在は、NPO法人D-SHiPS32での活動が中心になります。この団体では、障害の有無に関わらず、子どもたちがスポーツを楽しめる環境をつくることを目的に「親御さんをサポートするプログラム」、「子どもたちにスポーツを届けるプログラム」、「社会問題を解決するプログラム」を元に活動しています。

小松:
活動を始められたきっかけは何だったのでしょう?

上原:
以前、スポーツの素晴らしさを伝える講演をした際に、障害のある子どもを持つ親御さんに「普通の生活をさせてあげることで精一杯で、スポーツをさせてあげるなんて、とても出来ません」と言われたことがきっかけです。それを聞いた時に、私が幼い頃、障害を持つ私が、出来るだけ他の子どもたちと同じように過ごせるようにと何度も役所で母が頭を下げていたことを思い出したんです。
その時に、親御さんに余裕がなければ、子どもたちがスポーツに出会うきっかけすら出来ないことに気づき、「親御さんをサポートするプログラム」と「子どもたちにスポーツを届けるプログラム」を作成しようと思ったんです。また、親御さんに余裕がないのは、社会そのものにも課題があるのではないかと考え、「社会問題を解決するプログラム」もつくったのが始まりです。

小松:
お母様が苦しんでいらしたことが原体験だったんですね。その辺りのお話ものちほど伺わせてください。実際に活動されて、何か変化のようなものはありましたか。

上原:
そうですね、障害者やその家族を取り巻く状況は少しずつ変わって来てはいますが、もう少し色々な仕掛けが必要かなというのが正直なところです。

東:
例えば、どのような仕掛けが必要なのでしょうか。

上原:
現在、最も力を入れているのは、スポーツや畑仕事を通じて障害者と健常者の交わる時間と場所を増やすことで、交流を深めるための活動をおこなっています。

小松:
スポーツのみならず、畑仕事も、ですか!

上原:
はい。例えば、会議室に障害者と健常者を集め、机と椅子を用意して、「はい、今から交流を深めてください」と言われてもなかなか難しいですが、スポーツや畑仕事を一緒にするとあっという間に仲良くなれるんです。
スポーツを進めていくには意思の疎通が必要ですから自然と会話が生まれますし、障害者と健常者が一緒に畑仕事を進めていくと、「私は掘れるけど運べない」「私は運べないけど掘れる」というような状況が生まれ、役割分担のために相手を思いやり、コミュニケーションがとられていくんですね。

東:
なるほど、確かにそうですね。

上原:
私は、このような経験を通じて、障害者も健常者も、何から何まで全て自分でやる必要はなく、お互いがお互いを思いやり、社会の中でそれぞれの役割を果たせばいいのだということを伝えていきたいと思っています。また、障害児を持つ親御さんに向けては「たまには親の日。おやぽーと」という活動もおこなっています。D-SHiPS32が誰でも乗り込むことの出来る船(SHIP)」だとしたら、この活動は「港(PORT)」。親御さんの待つ「港」と親御さんのサポートという意味を込めて「おやぽーと」と名付けました。 

小松:
具体的にはどんな活動をしているのですか。

上原:
千葉県船橋市の商業施設“ららぽーと”に特別に設置されたスポーツやワークショップで子供達に楽しんで貰う場所で障害を持つお子さんを預かり、普段子どもにつきっきりでなかなかゆっくりと髪を切ったり、おしゃれをしてデートしたり出来ないというご夫婦に、私たちが代わりに子守をすることで自分の時間を過ごしていただくという活動です。
ところで、「きょうだい児」という言葉があるんですが、ご存知でしょうか?この言葉が嫌いだという方もいますが、ここではこの言葉を使わせていただきます。

東:
「きょうだい児」、初めて聞く言葉です。

上原:
障害を持っている子どもの兄弟姉妹のことを「きょうだい児」と呼ぶのですが、親御さんはどうしても障害のある子どものサポートに手がかかることが多いので、あまりかまってもらえなくて寂しい思いをすることはもちろん、親御さんのほうでもそれを気にかけているケースがありますので、ゆっくりと一緒に過ごす時間をつくってあげるということも大切なんです。
これらの活動を通じて、障害のある子どもをお持ちの親御さんのサポートをして、少しでも余裕をもって生活してもらえるようにしています。

小松:
それぞれの立場の方々に対する思いやりにあふれた素晴らしい活動ですね。

上原:
ありがとうございます。他には障害の有無に関わらず、家族みんなが一緒に交流出来るプログラムとして、キャンプも実施しています。昨年は田んぼ遊びを開催して、私を含め参加者みんなで泥だらけになりました(笑)。

東:
参加者みんなの笑顔が目に浮かびます。最高の思い出になったでしょうね。

 受け身の仕事はしない

小松:
こちらのNPO法人での活動と並行して、2016年からはNECに入社し、社員にもなられていますよね。

上原:
はい、NECではオリンピック・パラリンピック推進本部に所属し、主にパラスポーツの推進活動や、インクルーシブデザインの視点を活かした商品の開発に携わっています。

東:
商品開発もされているんですか!

上原:
はい、こちらの車椅子のクッションや、本日着ているスーツも私が開発に関わっています。他にもユナイテッドアローズとコラボレーションして、障害者向けの洋服をつくったりもしています。

小松:
どのような経緯で入社することになったのでしょうか?

上原:
NECに入る前は、グラクソ・スミスクラインというイギリスに本社がある製薬会社にお世話になっていたのですが、NPOの活動を進めていく中で色々と不便な点が出てきたので、2016年の3月に辞めることにしたんです。ちょうど辞めたその日に、NECのオリパラ本部で講演をしたのですが、終了後の会食で「今日、会社に辞表を出してきたんです」とお伝えしたところ、それでは是非ウチに来てください!と誘われて、その場で入社を考えるきっかけをいただきました(笑)。

東:
ものすごいタイミングですね。

上原:
本当ですよね(笑)ただ、NECに入社することでNPOなどの活動に支障が出てしまうと本末転倒なので、私がある程度自由にやらせてもらえないのであればお断りしますとお伝えしました(笑)

小松:
入社させてください、と頭を下げたわけではないんですね。毎日、どのようなスケジュールで勤務なさっているのでしょうか?

上原:
一応、週5日出社することになっているのですが、オフィスにはほとんど行けてません(笑)。NECでの私の担当業務はパラスポーツの推進による企業ブランドの向上ですが、NPOでの活動とも重なる部分が多いので、必然的に社外での活動が増えますよね。

東:
ご自身のやりたいことと企業の求めているものが上手くマッチしている素晴らしい事例だと思います。

小松:
現在はNPO法人の代表として、そしてNECの社員として様々な活動をされている上原さんですが、そのキャリアに到るまでには、3度のパラリンピック出場を始め、多くの栄光と挫折を経験されてきました。次回は現在の上原さんを築き上げた波乱万丈のストーリーを伺います。
(つづく)

 

編集協力/設楽幸生

インタビュアー/小松 成美 Narumi Komatsu
第一線で活躍するノンフィクション作家。広告会社、放送局勤務などを経たのち、作家に転身。真摯な取材、磨き抜かれた文章には定評があり、数多くの人物ルポルタージュ、スポーツノンフィクション、インタビュー、エッセイ・コラム、小説を執筆。現在では、テレビ番組のコメンテーターや講演など多岐にわたり活躍中。

インタビュアー/東 俊介 Shunsuke Azuma
元ハンドボール日本代表主将。引退後はスポーツマネジメントを学び、日本ハンドボールリーグマーケティング部の初代部長に就任。アスリート、経営者、アカデミアなどの豊富な人脈を活かし、現在は複数の企業の事業開発を兼務。企業におけるスポーツ事業のコンサルティングも行っている。

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