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2018.02.21
「僕はずっと夢の延長線上にいる」サッカー・浅野拓磨
2018年FIFAワールドカップ、日本代表が出場決定。
6大会連続、6度目の出場が確定したのは、
昨年のワールドカップアジア最終予選 オーストラリア戦。
華麗に先制点を決めたのは、FW浅野拓磨選手。
今回、一時帰国のタイミングでお会いすることができました。
「今日はよろしくお願いします。いい話、できるかな。」
彼の爽やかな笑顔と、和やかな雰囲気でスタートした取材。
世界の舞台で活躍する、トップアスリートの思考には
仕事、ビジネス、キャリアに通ずるものがあるのでしょうか。
特別スピンオフ企画です。
Profile
浅野 拓磨(あさの たくま)1994年11月生まれ
現役サッカー日本代表選手。高校卒業後、サンフレッチェ広島とプロ契約を結ぶ。2016年よりドイツ・ブンデスリーガ・VfBシュトゥットガルトに所属。2017年のW杯アジア最終予選オーストラリア戦では貴重な先制点を挙げ、勝利と共に6大会連続W杯出場に貢献した。ジャガーの愛称で親しまれる。
INDEX
一番重要な場面で自分の最大限の力を発揮する
―― 日本代表として活躍されている浅野選手。代表チームはさまざまな選手がそろっていると思いますが、その中でどうご自身をアピールされていますか?
本当、みんな個性的ですね。
自分らしさを持つ人が集まっていて、しかも芯が強くてブレないです。
その中で僕は自分の個性を押し出さないというか……無理にしゃしゃり出ないというか。
人は人、自分は自分っていう考え方なんです。
周りの選手よりも目立たないといけない、自分をどうにか表現しないといけない、人がやっているから僕もやらないといけない、そう思うことも無いんです。
たとえば、僕は喋ることが好きですけど、みんなが盛り上がっているからって無理をして輪に入っていくこともないですし、気にすることもありません(笑)
僕らの世界には、試合やプレーという絶対的な表現場所があります。
きっと他の世界にもそういう場ってありますよね。
それ以外でどう振る舞うかよりも、一番重要なところに集中して最大限の力を発揮すればいい。
僕はそう考えています。
―― つまり、浅野選手なら「ピッチ上」ということですよね。自分自身の仕事、サッカーをする場所。
そうですね。
サッカー選手であるからには、ピッチ上こそ自分をどう表現するかを一番考えるべき場だと思うので。
自分の武器を思いっきり活かして、誰が見ても最高のプレーができるようにしたいです。
だからこそ、ピッチ上では100パーセントで表現して自分の色を出すように頑張っています。
臆せず主張することで表現の幅が広がり成長できた
―― 100パーセントで表現するために、言いたいことも遠慮せず言えていますか?先輩後輩、年齢といった壁にぶつかってしまいそうですが……。
やっぱりそれもピッチ上では言うようにしていますね。
海外でプレーするようになってから、より発言できるようになりました。
国内でプレーしているときは「言わないといけない」って意識していたけれど、今は意識することなく。
そうしないと生きていけない世界に入ったので。
ドイツでは英語やドイツ語の知っている単語をとにかく並べて、ジェスチャーも交えて伝えています。
ここに走るから、ここにボールを出して欲しい、という感じで。
より物怖じせず言えるようになったこと、表現の幅が広がったことは、自分自身の成長に繋がっているなって実感します。
―― 言わないと生きていけない世界。確かに海外はそうかもしれませんが、日本代表チームだと言葉が通じるからこそ、気をつかうこともありませんか?
海外では伝えたいことをちゃんと伝え切れず、もどかしいことも多いです。
日本では言葉が通じるだけでありがたくて、言いたいことをはっきりと、ぱっぱっと口に出すようになりましたね。
もともとは気にしいなので、性格そのものが変化したように思います。
とは言っても、長谷部選手、本田選手など素晴らしい先輩方がいる中で、最初は名前を呼び捨てにするだけで緊張しました(笑)
でも、僕たちが目指しているのは仲良しこよしチームではなく「勝利」です。
プロとして集中すべきことは、サッカーのプレーだと信じてやっています。
海外選手のいい意味で周りを気にしない姿勢を取り入れる
―― 意識を分散させずに、重要な成果のみに集中する。それって仕事でも活かせますよね。では、周りからの評価もあまり気にしないんでしょうか。
まったく気にしないです!って言いたいですが、さっきも少し話したように、僕はもともと気にしいなんです(笑)
過去を振り返っても小学生からコーチの顔色をうかがっていましたし、ドイツでも監督の機嫌にプレーが左右されることがありました。
監督が自分を見ているって考えちゃうとミスをして。
そのメンタルの弱さが自分のマイナス面だなって、ドイツに行ってより感じましたね。
海外の選手っていい意味で周りを気にしないんですよ。
だから僕も監督や周りのことを気にしすぎないようにして、自分のプレーに集中するようになっていったんです。
―― 評価を気にしすぎると、モチベーションにも影響しますよね。浅野選手にとってモチベーションアップになることって何ですか?
家族へのテレビ電話ですね。
好感度を上げようとしているわけじゃないですよ(笑)
ドイツに行ってからは毎日するようになりましたし、家族と話をすると頑張ろうって思えるんですよ。
落ち込んだときも立ち直るきっかけになりますし、僕の支えですね。
厳しい勝負の世界で常にパワーを発揮するためにはもちろん、どんな時でも自分の実力を最大限に出せるよう、モチベーションを上げる方法を知っておくことは大切だと思います。
自分のテンションは自分で作るものだなって。
あと、試合のスイッチをどこで入れるかも自分自身で決めています。
僕の場合、試合前の準備ですね。
キックオフの2、3時間前に軽食タイムがあるので、そのあたりからスイッチを入れ始めます。
もっと前からっていう選手もいますけど、僕はできるだけリラックスして余裕を持っておきたいんです。
どこでプレーするかではなく、何に「挑戦する」か
―― 当初、イギリス・アーセナルFCへ移籍予定でしたが、ビザの許可が下りずにドイツ・VfBシュトゥットガルトへ。リーグも国も違いますが……。
サンフレッチェ広島(以下、サンフレッチェ)の頃から、海外ならブンデスリーガに挑戦したいと考えていたんです。
日本人が多く活躍しているし、プレースタイルも合っているかもしれないって。
そんな中でアーセナルから声をかけてもらって、せっかくならビッグクラブに飛び込んでみようって思いました。
結局、ビザ問題がありましたが、イギリスだからとかドイツだからとか場所はたいした問題じゃなくて。
どこに行こうが、僕はシンプルに「挑戦」するだけなんです。
新天地で自分のサッカーを思いっきりやる、ゴールを決める、ただそういう想いでした。
―― 身を置いた場所でやるべきことをやる。仕事にも通じますね。浅野選手にとっての仕事は「サッカー」だと思いますが、どう向き合っていますか?
サッカーは確かに僕の仕事ですけど、実は“仕事”っていう感覚になったことがほとんど無いんです。
お金をいただいてプレーさせてもらっているので、プロとしての大きな責任感は持っていますけど。
僕、昔からずっと夢を追いかけている延長線上にいるんですよ。
子供の頃からの「プロサッカー選手になりたい」っていう夢が実現して、またその延長線上にはゴールを決めたいとか、ワールドカップに出たいとか、新たな夢があって。
サッカーは夢や目標を追いかけ続けるもので、僕の人生そのものです。
「やらなきゃいけない」は自分にとってやりたいことを実現するためのポジティブな手段
―― 仕事を超えて人生なんですね。仕事だとどこか義務感もありますが、浅野選手はサッカーを「やらなきゃいけない」と捉えることは無いんだろうな、と。
いえ、ありますよ。
ただ、僕は自分が目指す夢に対して少しでも近づきたいから、常にやらなきゃいけないって思ってやっているんです。
僕はサッカーでやりたいことや叶えたいことがあるので、「やらなきゃいけない」っていうのは仕方なくという義務じゃないし、マイナス思考でもないんです。
やりたいことを実現するための、ポジティブな手段です。
―― まだ23歳と若いのに、そんな風に考えられるって素晴らしいですね。何かきっかけがあったのでしょうか。
高校進学が大きなターニングポイントでした。
四中工(四日市中央工業高校)は強豪校なので遠征費などのお金がかかるし、公立なので特待制度も無いんですよ。
うちは兄弟も多いし、とてもじゃないけど行けないだろうって。
地元の高校に普通に進んで、そこでしっかりと存在感を放ってプロになるつもりでした。
でも、サッカー部の顧問の先生が僕に言ってくれたんです。
「高校3年間はきっとご両親に苦労をかけてしまうだろうけど、その後しっかりプロになって恩返しをすればいい」って。
ああ、そういう考え方もあるなって気付いたと同時に、危機感も持つようになったんです。
四中工に行って、必ずプロサッカー選手になって、お父さんとお母さんに恩を返す。
そうなるとプロにならない、なれないという選択肢なんてすっかり消えます。
絶対になる。その覚悟で高校に進学しました。
ありがたいことに、サンフレッチェ時代からずっと仕送りという形で両親に返すことができています。
高校に進学できることが当たり前だと思っている時点で甘いなって思うんですよ。
高校に行けることが、強豪校を選べることが、サッカーをできることが幸せなこと。
だからこそ全力で頑張らないといけない。
僕、7人兄弟なんですけど、六男の弟が四中工でサッカーをしているので、そういう気持ちでやれよって言いたいです(笑)
今回、サッカーへの想いや日本代表としての姿勢を聞かせていただく中に
仕事やキャリアに活かせるヒントがたくさんありました。
「難しい」「まだまだ」は高いレベルに挑んでいる証拠
―― 四中工(四日市中央工業高校)を卒業してサンフレッチェ広島とプロ契約されるとき、大学進学は考えなかったですか?
僕は迷わずプロでした。
遠征費もかかる強豪校に行かせてくれた両親に、早く恩返しをしたかったんです。
大学に進めばまた両親に苦労をかけてしまうし、僕がプロ選手として活躍するのを待たせることになるじゃないですか。
プロに行けると確信したのは、実際にオファーをもらったときです。
それまでは本当になれるだろうかっていう危機感と焦りしかなくて。
高3の夏にサンフレッチェが一番にオファーをくれたんですが、心の底から安心しました。
第一声は「よっしゃ!」でも「やった!」でもなく「ほっとした」でしたね。
―― 強い想いを持って、実際にプロになられた浅野選手。サッカーをやめたいと思ったことはありますか?本音、聞きたいです。
やめたい、ですか(笑)
それは無いですけど、うーん……サッカーって難しいなって常に考えています。
プロになってからもずっと難しいですね。
ただ、それって自分の伸びしろだなって思うんですよ。
難しいって、高いレベルに挑んでいる証拠だなって。
サッカーに限らずそうじゃないですか。
出来ないな、まだまだだなって考えるということは、出来るようになろうと前を向いている証だと思います。
自分のこれからを想像すると楽しみ、自分の限界を決めたら夢は叶わない
―― いつまでサッカーをやりたいとか、そういう人生設計はどうでしょう。引退を考えたこともやっぱり一度も無いですか?
ざっくりと、35歳くらいまでは現役で活躍していたいなとは思いますね。
じゃあ、その先で何がやりたいかっていうのは、正直まだあんまり。
やっぱりサッカーに関わる仕事がしたいなとは考えますけどね。
あとは、地元にフットサル場をつくって家族をそこで働かせてあげたいな、とか(笑)
僕は、自分がこれからどうなっていくのか楽しみなんです。
誰よりもきっと僕が一番、僕自身に期待をしています。
―― 他人に期待をすればその結果は他人任せですが、自分に期待をすれば自分次第ですもんね。ただ、夢を叶えたいけれど自信がない方もいますよね。
夢を叶えたいけれど自信がないっていうのは、叶える気がないのと同じ。
厳しいかもしれませんが、僕はそういう感覚なんです。
やりたいことがあるのなら自信を持って、まずは全力で頑張ることが大切。
その姿勢がなければ、夢を現実にすることは難しいと思います。
たとえば、プロを目指す人が「将来どうしたい?」って聞かれたときに「大学に行きたい。それからプロになりたい」と答える時点でダメじゃないかって。
もちろん、大学に進学することを否定しているわけじゃないんです。
プロを目指しているのなら、将来どうなりたいかって聞かれたときに「プロになりたい」っていう言葉が最初に出ないと。
大学に行ってなんとなくプロになれたらって考えている時点で、その人はなれないだろうなって僕は思います。
自分で自分の限界を決めてしまっていたら、夢なんて叶わない。
あと、自信を持って思いっきり頑張るためには、支えてくれる人に「ありがとう」と感謝することも大切です。
それが恩返しをしたいっていう想いになりますよね。
恩を返すためには、今この瞬間を100パーセントやり切らなければいけない。
感謝、恩返し、全力投球。ちゃんと繋がっていきます。
夢をごまかさずに大切に、まずは小さな目標を見つけることから始めてみる
―― 感謝の気持ちって原動力になりますもんね。でも、そもそも「夢が無い」という人は、どうすればいいのでしょう。
夢ってどんなことでもいいんです。
まだまだ先の、将来の最終地点を自分で探そうとするから分からなくなってしまうのかなって。
有名になりたいとか、大きなことじゃなくてもよくて。
まずは小さな目標を見つけてみること。
幸せな家庭を築きたい、淡々と平和に暮らしたい、お金持ちになりたい、それも充分な夢じゃないですか。
幸せな家庭も、平和な暮らしも、お金を手に入れることも簡単なことじゃないから、実現するために何をすべきか考えていく必要がありますよね。
思い描くものを恥ずかしがらずに口にして、考えて、やるべきことをひとつひとつ頑張っていくこと。
みんな、叶わないものが夢だと思いがちなんですが、叶えにいくものが夢なんです。
僕はたまたまサッカーでしたけど、人それぞれの目標や夢をごまかさずに大切にして欲しいです。
―― 夢を追いかけ、限界を突破し続ける浅野選手。現時点での最終ゴールはどこにあるのでしょうか?
ゴールはありません。
今の目標は今年2018年のワールドカップでプレーすることですが、終えるとまた新たに目指すものが出てきます。
これまでもプロになりたい、試合で活躍したい、日本代表になりたい、ワールドカップに出場したいという感じで、ここまで進んできました。
その繰り返しなので、最終的なゴールって思い浮かばないんです。
ワールドカップで点を取って優勝するっていう現時点での「最大」の目標はあるけれど、それが「最終」ではないんです。
サッカー選手である限り、ゴールは更新し続けていくものだと思っています。
今は成長の過程、今の自分を評価できるのは未来の自分
―― 世界の舞台で活躍される方の言葉はやっぱり力強いですね。浅野選手の生き様をこれからもどんどん世の中に発信して欲しいなと思います。
そうですね、自分の今の背中を見てくれとは思わないけれど、僕が今までに経験してきたことやその過程は間違いではなかった。
そう自信を持って言えるので、伝える意味はあるのかもって思います。
ただ、積極的に伝えたいっていうわけじゃないんです。
しゃしゃり出るのは好きじゃないので(笑)求めてもらえるなら、ですね。
あくまでも僕の考え方は「人それぞれ」ですし、話を聞いて感じることも人によって違うと思います。
その中で、何か大切なことを思い出してもらえたり、気付いてもらえたりしたら、とても嬉しいことだなって。
これまで辿ってきた道のりは、今の僕にとって正解だったと胸を張って言えるけれど、今この瞬間の自分はまだ正解だとは言えないんです。それを決めるのは未来の自分。
これからも夢の延長線上を進みながら、全力でプレーをしていきたいです。
−半年後、6月から開催されるFIFAワールドカップ。
最後に、意気込みを聞いてみました。
今の自分にはまだまだ危機感しかありません。
もっと磨かないと、このままじゃ無理だとも思っています。
ワールドカップでピッチに立つためにも、まずはこの半年、100パーセント死に物狂いでやらないと。
成長をしなきゃいけないし、そうできる自信はあります。自分は今のままじゃない。
しっかり頑張ります。
取材後記
世界で輝かしく活躍されている、浅野選手。
トップアスリートとして実践されていることには、
私たちが仕事をより充実させるヒントがたくさん。
最重要の成果に集中し、最大限の力を発揮する。
モチベーションを上げる方法を、自分自身が知る。
目標を作れば「やらなきゃいけない」はポジティブな思考になる。
ゴールはいつも、更新し続けていく。
勝負の世界は厳しくて、
仕事には理不尽なこともあって。
思い通りにいかず、悔しいこともたくさんある中で
自分を奮い立たせるのは、他の誰でもなく自分自身でありたい。
スポットライトのもとで輝くトップアスリートだってその明るさの裏で、たゆまない努力をされています。
強い意志や信念、夢を持ち続けながら。
今回お届けした、浅野選手の考え方、生き方から
大切なものをひとつでも持って帰っていただけたら
とても嬉しく思います。

浅野 拓磨Takuma Asano
現役サッカー日本代表選手
浅野拓磨オフィシャルブログ
https://lineblog.me/asano_takuma/
取材/アスリートエージェント 尾崎俊介
取材・文/榧野文香
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