2017.08.23

経験と努力を重ねて個性をつくる。テニス・長谷川梨紗

明るくて元気で、いつも笑っている人。どうしてそんなにも楽しそうなのか、知りたいなって思いませんか?

Profile

長谷川 梨紗(はせがわ りさ)1990年1月生まれ

プロテニスプレイヤー。亜細亜大学を卒業後、プロの道へ。三重国際女子オープンダブルス優勝、ニューデリー国際オープンで同じくダブルス優勝などの実績を持つ。また、スクール事業、イベントやメディアなど幅広く活動中。always enjoy(常に楽しむ)がモットー。

経験と努力を重ねて自分の個性を知る

プロを目指す人に囲まれてプレーのレベルも意識も変化

―― 長谷川さん、テニス歴はどのくらいですか?

両親がテニスをやっていたので、幼い頃からテニスコートが遊び場でした。

だから、私の意思っていうよりも、気付いたらラケットを握ってコートに立っていて(笑)

テニスをしているって自分の中でちゃんと意識が出てきたのは、えっと……小学3年生くらいですね。

県大会とか、大きい試合に出始めた頃です。

ただ、そのときは町のスポーツ少年団で週2回ほど地元のおじさんに、土日は両親のテニス仲間のおじさん、おばさんに教えてもらうっていうくらい。

地元の熊本で楽しんでやっていました。

昔からラケットを振っていたから私にはテニスしか無いなぁって思って、中学からもずっとテニスを続けていきました。

中1でジュニアの全国大会で優勝して、そこで「プロになる」っていう夢が見つかったんです。

親や色んな人たちに「私、絶対にプロになる!」って言っていたし、引くに引けない状況を自分でつくっちゃったんです(笑)

経験と努力を重ねて自分の個性を知る

―― 宣言したんですね(笑)プロを目指してそこからはどんな進路を?

中3から高2までテニス留学をしたんです。

神奈川県にある有名テニスクラブへ。

誰もが知るプロ選手も所属されていたクラブです。

プロになりたいから行かせてくださいって両親にお願いをして、自分の意思で行きました。

一人暮らしをしながら3年間ずっとテニス漬けの生活でしたね。

―― 中学生から一人暮らし!勇気ある選択ですね。クラブでの練習や生活は、それまでのものと変わりましたか?

もう、ほんっと、レベルが違いました。

意識の高い人ばかりが集まっているから、一球一球に対する気持ちが強いんです。

私が過去にやったことのあるような練習メニューでも、取り組み方が全然違いました。

フォームひとつにしても徹底して修正していきますし、すべての質が圧倒的に高くて。

地元でやっていたときは、多少ミスが出たとしても「まあ、次で頑張ろう!」っていう感じだったんです。

でも、クラブでプロを目指す人たちには、「次」なんて通用しない。

怖いくらいのプレッシャーもありました。

でも、そういう環境に飛び込んで私自身の意識も、もちろんプレーのレベルも上がりました。

周りに追いつくために必死な毎日だったなぁ……。

経験と努力を重ねて自分の個性を知る

中学生で夢見たプロの世界はすっごく厳しかった

―― シビアな世界に身を置いて成長されたんですね。アカデミー卒業後にプロの道へ進まれたのでしょうか。

いえ、亜細亜大学に進学しました。

いくら有名クラブ出身だからといっても、高校を卒業したばかりですぐプロになってもきっと通用しないなって。

人間的にもテニスの技術にしてもまだまだ未熟。

そんな状態でプロの道に進んだところで芽は出ないだろうって思ったんです。

どこか冷静に自分を見ていました。

当時、亜細亜大のテニス部は全学年で20名以下。

少数精鋭でしたが、常に1部リーグにいるようなチームでしたし、先輩も厳しかったですね。

体育会でした。

チームの素晴らしさや仲間たちと高め合う面白さを知って、卒業してからようやくプロになったんです。

―― プロの世界って華やかに見えます。実際のところ、どうですか?

厳しいですよ。すっごく、厳しい。

“プロ”といっても、賞金って皆さんが想像されている以上に低いんです。

あ、錦織(にしこり)選手のように誰もが知っているようなスーパースターであれば、スポンサー料も高額になってくるのでまた違うんですけれど……。

私ほどのレベルだと、国際大会で優勝してもせいぜい10万円。

宿泊費、食費、交通費といった遠征にかかるお金を計算すると、優勝しても大赤字。

そういう実情があることを知らなかったわけじゃありません。

でも、それでもプロになりたかった。

中学生のときに抱いた夢を叶えたかったんです。

経験と努力を重ねて自分の個性を知る

賞金だけでは生活できないので、テニスコーチの仕事を並行してやっています。

レッスンを2、3ヶ月やってお金を貯めて、遠征に行って。

トーナメントが終わったらまた稼いでっていう流れです。

プロの道に進んだ22歳から今まで5年間、ずっとそういう生活をしてきています。

自分の練習、コーチとしてのレッスン、トレーニング、身体のコンディションを整える……やるべきことはいっぱいあります。

錦織選手のように、皆さんが知っている“プロ”以外にも、競技の世界には上から下まで色んなプロがいるんです。

ね、なかなか厳しいでしょう?(笑)

―― プロ選手はみんな100万円、1000万円と稼いでいる。そう思っている人ってまだまだ世の中には多いかもしれませんね。プロとして試合の実績はどうですか?

三重国際女子オープンでダブルス優勝、ニューデリー国際オープンで同じくダブルス優勝というように、国際大会で優勝と準優勝をいくつか。

飛び抜けて良い成績ではないけれど、自分が精一杯やってきた結果だなと思います。

ちゃんと向き合っています。

経験と努力を重ねて自分の個性を知る

テニス界に貢献したい、試行錯誤の日々

―― 先ほど、お仕事もされているとお話されました。ぜひ詳しく聞かせてください!

イベントやスクールでのレッスンがメインです。

フリーランスなので、色々やりながら、試行錯誤の日々ですよ(笑)テニスを教えることを通じてテニス界に貢献したい、ファンの方に楽しんでもらいたいなって思ってやっています。

あと、以前アスリート・ライブで紹介されていた大山俊護(おおやま しゅんご)さんが『Fightness(ファイトネス)』というプログラムをされていましたよね。(参考:https://athlete-live.com/interview/category/sports/oyama_shungo/

私もテニスエクササイズを考案して、今、少しずつ企業で実施しているところです。

今まで自分自身がやってきたトレーニングや身に付けた俊敏性、そういうのをうまく絡めて、カラダを楽しく動かせる内容にしていて。

先日、株式会社えがおさんに行ってきました。

地元熊本の企業なので、とっても嬉しくて!これまで関東メインの活動をしていましたが、もっと色んな場所でやりたいなって思いました。

熊本の復興にも関わっていきたいし、たくさんの人を笑顔にすることが私のテーマ。

企業にもどんどんアプローチしていきたいです。

頑張って開拓します!

経験と努力を重ねて自分の個性を知る

テニスで培った「相手を見る力」は仕事にも活きる

―― テニスで培ったもので、仕事にも活きていることってありますか?

テニスはネットを挟んで相手と向き合う競技。

だから、勝つためには相手をしっかり見ることが重要なんです。

試合ではプレッシャーに押し潰されそうなときもあるんですが、集中して相手を見てクセや動きを捉えられると、ちゃんと勝つことができるんです。

今これが出来ていなかった、ミスをしてしまった、そんな風に自分のことばかり考えてしまう試合ほど、いいプレーってできなくて。

テニスで身に付けた「相手を見る力」は、仕事にも活かせているなぁって思います!スクールやイベントでのレッスンでは、年齢も性別もさまざまな方が来てくださいます。

子どももいれば、保護者の方もいます。

相手の話し方、性格、特徴をしっかりと見ながらお話するように心掛けていますね。

「相手を見る力」を存分に発揮しながら、仕事を通して、社会人として、大人としての対応力も身につきました。

あと、レッスンで皆さんのことを見るから、自分の試合でもさらに相手選手を見られるようになったんです。

競技が仕事に活きて、仕事が競技に活きる。

繋がっていきますね。

経験と努力を重ねて自分の個性を知る

私が動くことで「やればできる」って示したい

―― ビジネスアスリートだからこその大きな強みですね!長谷川さん、この先のビジョンって何かあるのでしょうか。

ビジョンというほど大きなものじゃないんですが(笑)やっぱり私は人を元気にしたいんです。

そうして笑顔になってもらいたい。

これからはビジネスと並行して、メディア活動にもより力を入れていきます。

このキャラクターを最大限に活かして、自分のパワーをありったけ届けて、人や企業との繋がりも広げたいです。

正直、私は、戦績やランキングがそこまで高いわけじゃありません。

レベルの高い選手、それこそ錦織選手クラスなら、積極的に動かなくたって仕事はどんどんやってきます。

でも、そこまでのレベルじゃないなら、待っていても何も始まらない。

実績が無くたって、自分の強みを知っていれば、ビジネスやメディアで活躍できるんです。

私が動くことで「やればできる」って示したい。

自分自身がモデルになって、こうやって道を作っていけるんだよって後輩たちに伝えていきたいです。

―― 後輩想いですね。他にも伝えたいこと、アドバイスはありますか?

“楽しんで”!もう、このひとこと。

私にはこれしか言えません(笑)どんなことも、ただやるなら誰にでもできるんです。

でも、楽しいっていう感覚が根本にないと続けることは難しいと思っていて。

人って「やらなきゃ」とか「とりあえずやっている」っていう状態になりやすいから、自分が心から楽しむって意外と出来ていなかったりします。

とってもシンプルなのに。

それに、自分が楽しんでいないと、周りを楽しませられないですよね。

競技でも、ビジネスでも。

経験と努力を重ねて自分の個性を知る

楽しむためには自分の個性を理解してあげることから

そのためには、まず、自分の個性を分かってあげること。

人それぞれにカラーがあります。選手として競技をやってきたキャリアは充分にあるから、そこに自分の色をどう乗せるか。

キャラクターを活かして輝くことができたら、それってすごく楽しいですよね。

自分を知ることは、楽しむための一歩だと思います。

―― 長谷川さんって、ご自身の個性をちゃんと知っていらっしゃいますよね。

そうですか?(笑)

―― 自分の良さを自分で分かるって、簡単なようで意外とみんな出来ていないことだと思うんです。何か工夫したことはありましたか?。

試合中の私って実はものすごく怒るし、めちゃくちゃ怖いんですよ。

だから、プレーをしている自分のことがずっと好きになれなかったんです。

でも、レッスンをしたり色んな人と話したりする中で、「長谷川さんって明るいね」「楽しい人だね」って言ってもらうことが多くて。

ああ、私って普段は「明るい人」なんだって気付くことができたんです。

試合中はほんと、鼻息の荒いイノシシみたいで(笑)熱が入りすぎて周りが見えなくなっちゃうこともあるくらい。

でも、それは戦っている時のことで、いつもは明るくて楽しい自分がちゃんといる。

それに気付くことができて安心しました。

レッスンを続けていく中で、仕事をやっていく中で、自分の個性を知ることができたんです。

だから、どんなこともやってみるって大切。

経験を重ねていくと、強みも分かるし、自信だって持てるんですよね。

経験と努力を重ねて自分の個性を知る

飾らず、取り繕わず、ありのままの自分でいる

―― 「元気」「楽しい」「笑顔」というキーワードがたくさん出てきます。きっと、昔から明るさいっぱいの長谷川さんだったんだろうなと。

いえ、実は大学3年生くらいまで一匹オオカミのような人間だったんです。

ちょっとひねくれた感じで。「明るい」「楽しい」とは真反対にいましたね(笑)

―― えっ、意外です!

あはは(笑)確かに、地元熊本の田舎で培ったエネルギーとか、幼い頃からドイツやヨーロッパへ海外遠征をした経験とか、そういうものが私の活力のベースになっているし、明るさにも繋がっているなって思います。

昔も、今も。

ただ、テニス留学をした時に自分を偽ってしまったんです。

周りの人たちが強くてすごいから、私も強そうに振る舞わなきゃいけないと思ってしまって。

ツンとして、勝手に近寄るなよっていうオーラをまとうように意識しちゃったんです。

どこか居心地も悪かった。

大学までそんな状態だったんですが、3年生くらいだったかな、周りのテニス仲間たちが私のことを上手くイジってくれるようになって。

自分の本来の明るさを取り戻していって、そこからはもうずっとこんな感じです。

飾らず、取り繕わず、ありのままの自分でやる。

その大切さを、身をもって知ることができました。

上手くはまれば仕事に繋がるし、はまらなければ縁が無かったんです。

これからもずっと素の自分でいたいし、これが私の強みです!

経験と努力を重ねて自分の個性を知る

取材後記

「あの子はいつだって楽しそうでいいなぁ。」
「彼みたいにポジティブな性格になりたかったな。」

そんな風に、人のことが羨ましくなるときがありませんか。でも、その裏には「経験」や「努力」があることを覚えておきたいなって思うんです。たとえば、自信たっぷりに見える人が過去に大きな挫折を乗り越えている、とか。

長谷川さんも、クラブの厳しい環境に身を置いて、強い自分でありたいという想いが芽生えました。強く見せるために、ずっと明るい自分でいられたわけじゃなかった。だからこそ、今。

取材中、「あはは」と響く明るい声。まるで太陽のよう。屈託のないその笑顔は、きっと、彼女のこれまでの努力の証。

長谷川 梨紗Risa Hasegawa

プロテニスプレイヤー
現在:テニスエクササイズプロデューサー

長谷川梨紗 オフィシャルサイト
http://r-hasegawa.spo-sta.com/

長谷川梨紗 オフィシャルブログ
http://tblo.tennis365.net/hasegawarisa/

インスタグラム @risander0123
twitter @BigVoice18

取材/アスリートエージェント 東里直樹
取材・文・編集/榧野文香

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