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2025.02.20
日本一14冠 元レスリング選手 佐藤吏が伝える「勝利」の価値
現役中の日本一のタイトルは、通算14冠。
元レスリング選手の佐藤吏(さとう つかさ)さん。
「日本一になれば、人生がらりと変わると思っていたんです。
でも、人生なんてそう簡単には変わらなかった。」
そして佐藤さんは、決意しました。
自分の名前で社会に必要とされるようなことをしよう。
現役中に幾度となくタックルをした彼は今、
その勢いを落とすことなく
アスリートのキャリアづくりに突き進んでいます。
Profile
佐藤 吏(さとう つかさ) 1984年6月生まれ
4歳からレスリングを始め、天皇杯全日本選手権など現役中の日本一のタイトルは通算14回達成。レスリングの名門、秋田商業、早稲田大学出身。現在は一般社団法人日本アスリートコンサルティング協会 代表理事としてアスリートが活躍できる社会創りを行いながら、早稲田大学レスリング部コーチとして日本一のチーム作りにも貢献している。
アスリートである自身を活かし、アスリートの強みを生かす社会づくりを

―― 佐藤さん、アルソックのご出身ですよね。吉田沙保里さんも在籍されたレスリングの名門ですね。
早稲田大学を卒業してアルソックに入りました。
およそ4年間お世話になりましたが、戦力外通告を受け、退職することになりました。
現役中から選手と並行して起業もしたいと考えていたんですがこの時、必ず起業すると決めました。
―― 現役時は競技に集中する選手もいる中、どのような想いだったんですか?
自分自身の人生なんだから、引退の時期やセカンドキャリアはスポンサー任せにするんじゃなく自分で決めたいと。
そうしたら、早稲田のOBで読売千葉広告社の社長に「オリンピックを目指しながら経営もするなんて、生半可な気持ちじゃできない。どちらも失敗する。まずはうちの会社に入って学んだらどうだ。」とアドバイスをいただいて。
午前は会社、午後は練習と実業団並みの条件で面倒を見て頂きました。
入社して3年、ほぼ毎日、社会人経験のない僕に「仕事とは何か?」など多くのことを教えてもらいましたね。
いろいろ面倒を見ていただきました。
本当に命の恩人です。
その後、独立に踏み切ったんです。

―― 独立されていかがでしたか?
最初はもう、何をどうやればいいか分からず…手探りでした。
当時、パーソナルトレーニングブームの全盛期だったので、ウェイトコントロールならレスリングの知識も活かせるなと始めてみたら、思いのほかお客さまが増えて。
それで立ち上げたのが一般社団法人日本アスリートコンサルティング協会です。
『アスリートがアスリートであるために』というミッションを掲げ、アスリートのキャリアを生かせる社会の創出、アスリートの強みを生かした社会貢献、セカンドキャリアの解決に取り組んでいます。
たとえば、トレーニングやコンディショニングなど、独自の強みを持ったアスリート・講師の派遣から始めました。
プロの皆さんが持っている高いスキルを世の中に発信するために、マーケティングプランや企画をつくり、企業と繋げたりしています。
今はトレーニングに限らず、様々な分野の一流の方々とプランニングする形に拡大しています。

三越伊勢丹さんの『完全オーダーメイド講座』からもオファーをいただき、ヨガインストラクター、ダンサー、鍼灸師、美容師、ジュエリー作家、フラワーアーティスト、ネイリスト、カウンセラー、お菓子作家などさまざまな分野から一流の講師を派遣していますね。
僕はレスリングである程度しっかりやってきたという自負があったので、他分野でも一定のレベルまで突き詰めたひとと仕事をしてみたいと考えていたんです。
アスリート時代に築いたネットワークを使いながら、それを実現できるようにずっと動いてきました。
夢描いた日本一を獲得し、待っていた現実と学び

―― レスリング選手の引退は一般的にいつ頃なんでしょう。佐藤さんのように起業される方も多いのでしょうか。
全体の7、8割は大学生で引退しますね。
そこで残ったひともほとんどが25歳頃には辞めてしまいます。
4年のオリンピックスパンで考えるので。
引退後はひとそれぞれで、完全にキャリアチェンジする、スポンサー企業に残ってそのままサラリーマンとして勤め続ける、コーチになる、などですね。
起業はめずらしいかなと思います。
まわりでパッとすぐ思い浮かぶ人はいないですし、レスリング界の中では少ないかと。
―― 佐藤さんはサラリーマンになることはまったく考えていなかったんですか?
僕は考えていなかったです。
アスリートのセカンドキャリアに関することをやりたいけれど、それって一般企業では難しいかなと思っていたので。起業だぞ、と。
ただ、義親の事業を 2年ほど手伝い、とんかつの「かつや」の立ち上げを一店舗任せてもらっていました。
右も左も分からない状態からマネジメントからオペレーションまでやって…。
ものすごく難しかったですね(笑)。
読売千葉広告でお世話になっている時は早稲田のコーチとして練習の半分を私が担当していました。
そこで、団体日本一や学生王者も育てていたので、チームマネジメントは出来ると思っていましたが、それが間違いでした。
スタッフには時給以上のモチベーションで仕事をして欲しいけれど、スタッフ側は時給をもらってどれだけラクできるか、ですから(笑)。
でもそこでの経験が、ひとの動かし方の学びになりました。

―― では、現役時代のお話も。レスリングを通して学んだこと、印象的なエピソードなど、ぜひ聞かせてください。
21歳のときに全日本チャンピオンになったことですね。
男子フリースタイル66kg級で。
僕、日本一になったら人生がらりと変わるだろうって考えていたんですよ。
高校生のときは1位になれなかったので、大学での一番の目標は全日本チャンピオンで。
実際に日本一になると、やっぱりちやほやされましたね。
いろんなひとが寄ってきてくれて、すごいね!って。
ただその半年後に負けたときが辛かった。
どんどんひとが離れていくんですよ。
ちょっと人間不信になるくらいでしたね…(苦笑)。
そこから自分自身を見つめ直しました。
チャンピオンになっても人生なんてそう簡単に変わらない。
それならただ勝つことにこだわるんじゃなく、勝ちに繋がるまでの自分のスタイルをもっと大事にしようと。
あと、当時すでに起業を考えていましたが、自分の名前で社会に必要されるようなことをしよう、僕にしかできないことを突き詰めようという想いがより強くなりました。
全日本チャンピオンという看板にひとが集まって、その看板が無くなった途端にひとが去った経験をしたおかげですね。
「勝利」という結果が、引退後の人生につながっていく

―― 今、早稲田大学のレスリング部でコーチもされていますが、どのようなチーム作りを意識されているんでしょう。
「任された階級で、絶対に自分が結果を残すんだ!」という責任感を学生たちに持たせるようにしています。
少数精鋭なので、気の持ち方、勝ち方を大切にしていますし、一回の攻撃で最大得点を狙うことをしつこく言っていますね。
責任感につながりますが、学生一人ひとりの意識も高いんです。
練習の時間内はもちろん、それ以外でも。練習をしているときだけがレスリングじゃないですし、練習外の時間をないがしろにしたら社会に出ても通用しないですしね。
人数こそ少ないですが、結束力はありますよ。
早稲田は選手全員で一体となる力があると思っていますし、昔から代々そうだと思います。

―― 責任感はスポーツを通して学ぶ大切なことのひとつですよね。その他にはどんなことを教えていますか?
「まずやってみる」ということです。
やってみると上手くいきそうなことが見つかるので、次はそれを「やり抜くこと」。
ひとつのことを続けるってものすごく意味がありますから。
あとは「どうして勝たなければいけないのか」ということも。
競技者としてはもちろんですが、勝つという経験はこれからの人生に繋がるから、と。
競技者としての今だけでなく、その先のキャリアを見据えた指導をしています。
先日の大会では4位で少し順位が上がったので、前向きに捉えています。
練習内容を変えてある程度のカタチができてきたので、これを続けていけばチャンピオンも狙えるかなと考えています。
取材後記

―― 最後に、現役アスリートに向けてエールをお願いします!
まず、現役でしっかり「勝利」という結果を残すこと。
その結果が必ず、引退後のキャリアのフックになってくれる。
いろいろな情報も集まってきます。
ただ、勝ったからといって天狗にはなるなよと言いたいですね。
スポ―ツから離れた世界にも素晴らしいひとがたくさんいるし、外に目を向ければ多くの気づきがありますから。
他分野のトップレベルのひとたちと対等に話すためには、まず自分自身のレスリングのレベルをトップにしないと。
だからこそやっぱり、結果を残すことが大事ですね。


佐藤 吏Tsukasa Sato
元レスリング選手
現在:一般社団法人 代表理事/早稲田大レスリング部コーチ
取材/アスリートエージェント 小園翔太
文/榧野文香
一般社団法人日本アスリートコンサルティング協会
http://asukon.net/
Tシャツ提供 ニューモード株式会社
https://newmode0209.fashionstore.jp/
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