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2017.11.17
自分だけの道を自らの手でつくる。テニス・赤羽毅朗
とにかくテニスに向き合った。
24時間ずっと、テニスのことを考えていた。
挫折を乗り越えて、夢だったプロになることができた。そうして今、その経験を余すことなく活かして生きている。ビジネスアスリートとして。そう、次は、仕事のプロとして。
「だから、僕は自信を持って、胸を張って言いたいんです。アスリートの引退後は、全然ネガティブなんかじゃない。ひとつのことに全力投球してきたアスリートには、絶対に強さがあるから。自分を信じて欲しい、心からそう思います。」
Profile
赤羽 毅朗(あかば たけろう)1986年6月生まれ
元プロテニスプレーヤー。8歳からテニスを始め、超名門と呼ばれる自由ガ丘インターナショナルテニスカレッジを卒業。大学ではインカレ単複ベスト4、全日本学生室内選手権ダブルス準優勝の戦績を残す。2009年から2012年までプロとして活動。現在は、株式会社ワークハピネスにて、コンサルタントとして組織と人の改革に従事。
INDEX
気楽に始めたテニス、中学2年生からプロを目指して猛練習
―― 赤羽さんがテニスを始めたきっかけって何でしたか?
幼稚園からずっと仲の良かった友人がテニスをやっていて。
何度か練習について行って見学していたら、「見ているだけじゃなくて一緒にやってみる?」と誘われたんです。
気楽な感じで、小学2年生のときにテニス人生がスタートしました。
そのときに「別にいいや」って断っていたら、今どこで何をしているか分からないですね(笑)
―― 断っていたらこうして赤羽さんにインタビューもできなかったですね(笑)何気なく始めたテニス、どうでしたか?
やっているうちにどんどん楽しくなっていって、友人に追いつけるように頑張っていたら少しずつ上手くなっていきましたね。
テニスの面白さに触れてのめり込んでいきました。
もっと上達したいという想いも膨らんで、小5のときに自由ガ丘インターナショナルテニスカレッジ(以下、JITC)に入ったんです。
レベルが高くて強い選手がたくさんいるスクールでした。
いい環境で練習しながら「誰よりも強くなりたい」と思うようになって、中学2年生頃からプロを目指すようになりました。
―― そこからずっとテニス漬けだったんだろうなと思います。
もう、とにかく練習していましたね。
1日24時間ずっと頭の中はテニスのことばかりで、寝ても覚めてもテニスだったなぁと(笑)
大学はスポーツ推薦で日本大学(以下、日大)に入学しました。
僕、高校まではかなり弱かったんです。
自分のやる気や頑張りに反して、インターハイに出場しても初戦や2回戦で負けたり、全日本ジュニアでもいい成績を残せなかったり……。
日大では4年間レギュラーとして試合に出させてもらいました。
戦績としては、全日本学生選手権でシングルス・ダブルスともにベスト4、全日本学生室内選手権ではダブルスで準優勝。
大学でようやく花が開いていったんです。
海外にも行くようになって、3年生でアメリカ、4年生ではスペインのテニスアカデミーに単身で留学もしました。
気持ちをうまくコントロールできずに落ち込むことも多かった
―― これまでの努力が実り始めたんですね。ということは、大学からは挫折もなく順調だったんじゃないですか?
いえ、そんなことないですよ。
というか、テニス人生ほとんど挫折ばっかりです(笑)最初は中学生のとき。
実は、中2で「プロになりたい」と言った直後に燃え尽きてしまったんです。
プロを目指して一心不乱に練習をしてエネルギーを出し切ってしまい、一気に冷めてしまって。
バーンアウトですね。JITCにも3ヶ月くらい行かなくなりました。
当時の担当コーチが自宅まで来て、話してくださったおかげで戻ることができましたが、高校では練習量に比べて結果がまったく伴っていなかったので、挫折がたくさんでしたね。
小さいものから大きなものまで。
うまく気持ちをコントロールできなくて、絶対に勝てるような相手にボロ負けすることもあったんです。
あとは、花が開いた大学時代にも。
それまで初戦敗退をしていたような自分が、全日本の大会で初めて準決勝、決勝に進めました。
今までとても苦しかったけれど、僕はこれで変われるぞって思ったんです。
でも、テニス留学をしたときにその希望は打ち砕かれました。
日本とはまったく違う環境で、自分のやりたいテニスが全然できない。
こうしたら上手くいくだろうと考えていたこともだんだん自信がなくなって……。
気持ちを上手くコントロールできなくて、落ち込んでしまったんです。
せっかく変われると思ったのに、またこうなってしまうんだと落胆しました。
もしかしたらそれが一番大きな挫折だったかも。
プロを目指す覚悟と家族や友人の支え
―― プロを目指して、数々の壁を乗り越えてきた赤羽さん。大学卒業と同時に、やっぱり迷うことなくプロになられて?
いや、卒業の直前までかなり迷っていたんですよ。
昔からずっとプロになりたいと思ってやってきたけれど、落ち込んで悩んでいる状態でプロになっていいものかって。
就活はしていなかったので内定先は無かったですが、留年して来年に就活するのも一つの道かもしれないなと。
お世話になった方、テニス関係じゃない方も含めて、色んな人に相談しました。
そうしたら、たいていの方に「プロを目指すことも、テニスを本気でやることも、今しかできないよ」って言われたんです。
「お前がその気になって真剣にやれば、きっと就職はいつでもできると思う。努力さえ怠らなければ仕事は見つかるはずだ。」と。
家族もみんな同じ意見でした。
その言葉が支えになったのと、あと、それと……
―― それと?他にも何かあったんですね?
とあるテニス選手が活躍している記事を目にしたときに「いいな。羨ましいな。」って思ったんです。
そんな風に悔しくなるなら、まだテニス続けるべきじゃないかなって。
できるところまでやろうと、プロになることを決意しました。
2009年から4年間、プロテニスプレーヤーとして活動したんです。
― 国内外の試合で成績を残し、26歳の冬、全日本大会を終えてプロ生活に幕を下ろします。引退後、株式会社ワークアンドハピネスに入社。今回の取材場所にもなっています。
テニスで身につけた屈しない心、諦めない心が仕事にも活かされている
―― ワークハピネスでは一体どんなお仕事をされているんですか?
弊社は、組織や人を変えることで新たな価値を生み出すコンサルティング事業を行っています。
つまり、組織や人のミッションを発見するお手伝いをして、存在意義を見つけるということ。
具体的には、経営陣を集めて会社の方向性を確認し、もしブレているなら軌道修正をする。
社員の皆さんが「何のためにその会社で仕事をしているか」を認識して、上手に個性を発揮できるようにする。
そのための研修やワークショップを実施していています。
僕自身の仕事としては、コンサルタントとしてクライアントの教育・育成方法や課題などを伺いながら、弊社が出来ることを提案することです。
お客さまに寄り添うことを大切にしています。
あとは研修講師もしているので、伝えるべきことを丁寧にお伝えして、社員の皆さんの学びとなるよう努めていますね。
―― アスリートとコンサルタント。まったく異なるジャンルですが、テニスを続けてきた経験は活きているのでしょうか。
もちろん。
何ごとにも屈しないでやってきたことが、いちばん活きているなって思います。
現役でテニスをやっていたときに大学までずっと花が開かなくて、でも、それでもプロになりたという強い想いがあったので負けずに続けてきました。
そういう経験があったので、「屈する」「諦める」という選択が僕には無かったんですよ。
引退して初めてビジネスの世界に飛び込んで、コンサルティングという未知の仕事をやることになったとき、もちろん壁にぶつかりました。
まず、単純なビジネススキルさえ持っていないことにものすごく苦しんだんです。
名刺交換とか、メールの返信方法とか、学んで身に付けられるものはまだ良かったんですけど、ビジネスにおいてのコミュニケーションは本当に難しくて。
何て言うんでしょう……論理的に伝える、要点を分かりやすくまとめる、そういうものが。
今、入社して4年になりますが、経験を重ねていく中で相手の求めることを考えながら、「ここが反省点だな」「次はもっとこうしよう」と、ひとつひとつ乗り越えてきました。
何ごとにも負けないぞ!と意識していたわけじゃなく、テニスの経験を通して培った屈しない精神力を、仕事でも自然に発揮できているんだと思います。
プロとしての自覚・自信が人の行動を変える
―― ビジネスアスリートだからこその強みですね!テニスと仕事に対する姿勢で、共通している点もありますか?
自分を“プロ”だと信じることです。
プロになることを周りに相談していたとき、「プロの第一歩目は、自分を“プロ”だと思うことだ。」と言ってくれた人がいたんです。
とても力強い言葉で、ずっと頭に残っていて。
テニスを通じてもそういう指導をされてきたんです。
自分なんて、とか、こんなことをやっても上手くなれないって考えていたら、後ろ向きの人間になってしまうし結果も付いてこない。
世界一になるんだと信じていたら、前向きになっていい結果も出る。
だから、自分を“プロ”だと思って頑張ることの重要さは、僕自身もちゃんと理解していました。
ビジネスマンとしてこの会社に入ったときもそうです。
コンサルティングなんて分からない、自分にはできない、そう考えていたらきっと成果なんて出せないなって。
これまで社会人経験がなくても、コンサルティングスキルがまだ乏しくても、自分は“プロ”なんだって自信を持つこと。
そうして前を向いて努力することでしっかり成長できるし、クライアントや会社に貢献できると思うんです。
意識を高く持っておくか、それとも低くしてしまうのか。それによって人って行動も変わるんですよね。
どういう意識でいるかって自分で自由に選べることですし、結果にも繋がる。
それはテニスでもビジネスでも同じだなと思います。
もっと言うと、スポーツ全般とビジネスでも同じことではないでしょうか。
―― 成果を出すには、意識を高く持つ。それってスポーツも仕事も同じですし、だからこそアスリートはビジネスの場でも輝けますよね。
そう思います。
何も出来ないなんてことは無くて、アスリートとして競技に真剣に向き合ってきたからこそ、引退後も何だって出来るはずです。
一人でも多くの方にいい変化を実感してもらいたい
―― これからの赤羽さんのビジョン、聞かせてください!
そうですね……実は、今模索中なんです。
テニスでは「日本一」という目標として明確なものがあったんですが、ビジネスの世界でそれに並ぶようなものはまだ見つかっていなくて。
仕事に「日本一」って無いですしね(笑)燃えるような目標、ビジョンとなるものを探しながら日々の仕事に励んでいます。
ただ、一人でも多くのお客さまに“良い変化”を提供することは、いつも目指しています。
優れた成果を出すためには、抜本的に意識を変えていかなければいけません。
この仕事をしていると、その必要性を痛感するんですよ。
意識改革というのは「企業」「組織」にとって特に重要なことですし、ビジョンとは少し違うかもしれませんが、それは常に頭に置いていますね。
あとは、やっぱりスポーツが好きなので、スポーツ関連の活動をいずれやりたいなと考えています。
現役中、僕自身が気持ちのコントロールを上手く出来ずに苦労したので、成果を出したいけどなかなか上手くいかないという人を輝かせることをやりたいなと。
そういう想いはずっとあります。
―― 最後に、引退や就職などキャリアの分岐点で悩んでいるアスリートへ、ビジネスアスリートの先輩としてアドバイスをいただきたいです
そうですね、僕としては3つあります。
まず、できるだけ多くの人に会って話をすること。
最低でも10人以上です。それも競技関係やいつもお世話になっている方だけじゃなく、違う分野の方も含めたほうがいいですね。
新しい考え方に触れるとそれまで無かった角度から物事を捉えられるし、自分の頭の中も整理できます。
迷っていること、悩んでいることを誰かに話すってとても大切で、繰り返すうちに少しずつ答えが分かってくるんですよね。
僕自身もそうでした。
次に、日々のコミュニケーションを意識すること。
というのも、さっき少し話しましたが、僕がビジネスの世界に飛び込んだとき、要点の掴み方、論理的な伝え方、相手の話をうまく整理することにものすごく苦しんだんですよ。
競技とビジネスでのコミュニケーションってやっぱり違うので、できる範囲で日頃の会話、話の聞き方などを工夫する意識を持っておくといいと思います。
取材後記
3つ目、最後のアドバイス。
赤羽さんは強いまなざしで続けてくださいました。
「最後は、これがものすごく重要なんですが、正解を探そうとしないこと。人ってどうしても答えがあると安心するけど、誰かにとっての正解が自分にとっても「正解」とは限らないですよね。正解を探そうとしてしまうと、思考力は育たないし、いいものは得られません。」
正解を探そうとしない。
では、どうすればいいのでしょう。
「自分が納得いくまで考え抜くことです。自分が何を考え、なぜそういう思考になっているのか。そう突き詰めることで、正解探しではない自分なりの“解”に辿り着きます。
そしてもし自信が持てなくても、まずはトライしてみること。自分だけの道を自らの手でつくることが一番かっこいいですし、僕自身そうあれるように努力し続けます。」

赤羽 毅朗Takerou Akaba
元プロテニスプレーヤー
現在:コンサルティング営業
赤羽毅朗 オフィシャルサイト
http://www.87pat.com/takero-akaba/
株式会社ワークハピネス
https://www.workhappiness.co.jp/
取材/アスリートエージェント 大芦恭道
取材・文・編集/榧野文香
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