2024.12.23

注目されている野球指導者のライセンス|内容や取得方法について紹介

近年、野球界では指導者ライセンスが導入され注目を集めています。どんな種類のライセンスがあるのかや導入の背景、ライセンスを取得するメリットなどを解説します。

野球の指導者を目指している方はぜひ参考にしてください。

野球の指導者になるためにライセンスが必要?

そもそも野球の指導者とは?

野球の指導者はコーチとも呼ばれています。活躍の場は少年野球や学生野球、プロ野球と幅広く、なり方や難易度にもバラ付きがあるのが現状です。

コーチの主な役割は試合中に監督のサポートをしたり、監督から出たサインをランナーに伝えるランナーコーチを務めること。少年野球の場合はコーチがスコアラーを担当することも珍しくありません。

また、コーチは試合だけでなく練習のサポートも行います。選手たちに野球の技術を伝え、チーム力を向上させるのがコーチの大切な役割です。

中学や高校、大学野球の場合は部活の顧問である教員がコーチを務めるのが一般的ですが、外部指導者としてコーチが招かれるケースもあります。

少年野球の場合は保護者がコーチ役を務めることも。そのため、コーチになる難易度はそれほど高くありません。

ただし、プロ野球コーチまでの道のりは難関です。実績やコネクションが重視される世界なので、元プロ野球選手が引退後にコーチに転身するケースも多いです。

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ライセンスの必要性

野球の指導者になるためにはライセンスが必要なのでしょうか?

実はこれまでは、特別なライセンスがなくても野球の指導者になることが可能だったのですが、近年は制度が整備され、指導者のライセンスが誕生しました。

全日本軟式野球連盟は2024年度シーズンより、指導者を対象にライセンス取得の義務化を実施します

少年野球や軟式野球のコーチをする場合は、以下のような資格を持っている人が指導に当たらなくてはいけません。

  • JSBB公認学童コーチ
  • JSPO公認コーチ1(軟式野球)
  • JSPO公認コーチ3(軟式野球)
  • JSPO公認スタートコーチ(スポーツ少年団)
  • JSPOコーチングアシスタント
  • BFJ公認野球指導者基礎Ⅰ(U12)

なお、硬式野球ではライセンスの取得は義務化されていませんが、今後は義務化される可能性も考えられます。

野球界で指導者ライセンスが注目されている背景については後述します。ここからは、3つの代表的なライセンスを紹介します。

BFJ公認野球指導者資格

概要

日本野球機構(NPB)と全日本野球協会(BFJ)は野球の普及振興を目的とするプロ・アマの合同会議体「日本野球協議会」を発足し、2019年に指導者資格制度を導入しました。

アマチュア野球界で初となる共通の指導者資格です。原則として、硬式・軟式の区別なく、特定の団体に所属していることを条件としない資格になります

指導対象となる年代別に「U-12」と「U-15」の資格に分かれているのが特徴です。指導の基礎となる共通の指針を設け、指導者自身が「グッドコーチ」となることを目指し、指導者資格制度の拡充を進めています。

日本野球協議会が求める指導者像は、ただチームが強くなればいいというものではなく、選手の人間力を育むことのできるコーチのことです。

グッドコーチとは、下記の提言に基づいています。

  • (1)暴力やあらゆるハラスメントの根絶に全力を尽くしましょう。
  • (2)自らの「人間力」を高めましょう。
  • (3)常に学び続けましょう。
  • (4)プレーヤーのことを最優先に考えましょう。
  • (5)自立したプレーヤーを育てましょう。
  • (6)社会に開かれたコーチングに努めましょう。
  • (7)コーチの社会的信頼を高めましょう。

引用:全日本野球協会

取得方法や条件

資格取得のためにはBFJや加盟団体が実施する講習会を受ける必要があります。受講条件は、下記の2点です。

  • 4月1日時点で満18歳以上
  • スポーツや野球競技の指導にあたっている、または今後指導者になろうとしている

また、2023年7月からは一部の大学や専門学校で資格取得を目指すことも可能です。「免除適応コース」と称され、BFJや加盟団体が実施する講習会を大学や専門学校で受けられるというもの。

試験はオンラインで受けることができます。学校ごとに、定められたカリキュラムの履修および申請手続きが必要となり、手続きの方法は学校ごとに異なります。

費用

受講料:講習主催団体が定める

テキスト代:11,000円(税込)

登録料:10,000円(税込)

参考:全日本野球協会

全日本軟式野球連盟公認学童コーチ

概要

公益社団法人全日本軟式野球連盟が認定する指導者資格です。学童、少年部から一般まで指導者の資質と指導力の向上を図り、安全安心な軟式野球を正しく広めることを目的としています。

カリキュラムは専門科目6時間(基礎理論5時間、実技1時間)からなり、スポーツマンシップやリスクマネジメント、ハラスメントについて、指導者に必要な医学知識などを学ぶことができます。

実技では正しい投動作の指導などを実践します。軟式野球のすそ野を支える学童部の指導者として、スポーツ障害予防に努め、競技者の健全な成長を支え、人間力を育むことを目指しています。

資格者として登録すると4年間有効で、期限が切れる6ヶ月前までにリフレッシュ研修を受ける必要があります。

取得方法や条件

この資格は、講習会は実地でもeラーニングでも受講することができるのが特徴です。実地講習会は各都道府県支部が実施します。

なお、受講条件は下記になります。

受講年度の4月1日現在満18歳以上で、全日本軟式野球連盟登録チームやスポーツクラブ、スポーツ少年団等において軟式野球競技の指導にあたっている者。または指導者になろうとしている者で、全日本軟式野球連盟の承認を得た者。

費用

受講料
オンデマンド講習会:4,000 円(税込)(設計中)
都道府県支部講習会:主催支部により定める。

登録料(4年間)
2,000円(税込)

引用:全日本軟式野球連盟

日本スポーツ協会(JSPO)公認軟式野球コーチ

概要

日本スポーツ協会(JSPO)では、中央競技団体や都道府県、各種スポーツ協会などと連携し、適切な資質能力を身につけたスポーツ指導者を育成しています。

すべての指導者資格に共通するマインドは、スポーツの価値や未来への責任を自覚し、競技者を中心に据える「プレーヤーズセンタード」の考えのもと指導を行うこと。

暴力やハラスメントなどの行為を排除し、自らも学び続けながらプレーヤーの成長をサポートできる指導者を求めています

野球分野においては、公益財団法人全日本軟式野球連盟と共同主催で公認軟式野球コーチ(1および3)の資格を発行しています。

地域のスポーツクラブやサークル、初心者、子どもたちに対して軟式野球の基礎指導を行うことができる公認軟式野球コーチ1と、全国レベルの競技者を対象に指導する公認軟式野球コーチ3に分かれており、受講科目や受講料が異なります。

公認軟式野球コーチ3においては、指導にあたるとともに、ジュニア層の競技者の発掘や育成も行い、シニア層に対しては競技力向上に貢献することを役割として定めています。

取得方法や条件

取得方法
公益財団法人全日本軟式野球連盟が実施する講習会および検定試験、審査を受けること。

受講条件
<公認軟式野球コーチ1>
受講年度の4月1日現在満18歳以上で、全日本軟式野球連盟登録チームやスポーツクラブ等において軟式野球競技の指導にあたっている者。または指導者になろうとしている者で、都道府県軟式野球連盟の推薦を受け全日本軟式野球連盟の承認を得た者。

<公認軟式野球コーチ3>
受講年度の4月1日現在満22歳以上で、全日本軟式野球連盟登録チームやスポーツクラブ等において軟式野球競技の指導にあたっている者。または指導者になろうとしている者。

費用

受講料
<公認軟式野球コーチ1>
共通科目Ⅰ:15,400円(税込)※別途リファレンスブック代
専門科目:15,400円(税込)※実施団体が別途定める場合がある

<公認軟式野球コーチ3>
共通科目Ⅲ:22,000円(税込)/教師:61,600円(税込)※別途リファレンスブック代
専門科目:11,000円(税込)※実施団体が別途定める場合がある

登録料
<公認軟式野球コーチ1>
基本登録料:10,000円
資格別登録料:0円
初期登録手数料(初回登録時のみ):3,300円

<公認軟式野球コーチ3>
基本登録料:10,000円
資格別登録料:2,000円
初期登録手数料(初回登録時のみ):3,300円

引用:JSPO

野球界に指導者ライセンスが導入された背景

野球界において、ライセンス取得が注目されている背景にはどんなことがあるのでしょうか。

冒頭でもお伝えした通り、NPBとBFJは2024年度シーズンより指導者を対象にライセンスの取得を義務化させます。

バスケやサッカーと異なり、野球界ではこれまでライセンス制度も指導の共通指針が存在しませんでした。

各団体や年代、カテゴリごとに発展してきたため、各々の指導者が独自の技量で指導にあたるのが現状だったのです。

一方、バスケやサッカーにはグローバルスタンダードな指導法が存在し、世界中でレベルの高い指導者が活躍しています。

野球界では根性論や精神論による指導が根強く残り、特に子どもたちへの体罰や暴言などが問題視されていました。

共通の指導理念がないままに指導が行われるため、暴力的な指導は改善されることがなく、抜本的な改革を求める声も増えてきました。

プロ・アマの合同会議体「日本野球協議会」による指導者資格制度が発足したことにより、健全な野球界への是正することが期待されています

また、選手たちが年齢を重ねて所属が変わったとしても、野球界全体で一貫して選手の育成を行える体制が整い、自立したプレーヤーたちの輩出を目指しています。

そして、ライセンスが存在することでコーチたちの社会的信頼が高まっていくことも予想されています。

ライセンスを取得するメリット

チーム力の向上

指導者ライセンスを取得する過程で、チームマネジメントについても学ぶ機会があります。野球はチームスポーツです。1人ひとりの技術はもとより、チームメンバーがいかに連携できるかが鍵となります

現在、野球チームの指導にあたっている、もしくは将来的に指導者となる場合、チームマネジメントの知識は必ず役に立つでしょう。適切な采配を知っていることで、チーム全体が強くなります。

生徒や保護者から信頼を得られる

ライセンスを取得するメリットの1つに、「信頼を得られること」が挙げられます。

すでにお伝えしている通り、これまでの野球界は指導者の資格制度や共通の指導指針が存在せず、それぞれの指導者が独自に技術を教えているのが現状でした。

しかし、共通のライセンスができたことで自分のスキルを広く証明することが可能になります。

「あのコーチはちゃんと資格を持っている」と認識してもらえることにより、信頼関係も深まります。しっかりと勉強した上で指導にあたっているという安心感も与えることができるでしょう。

人間力を高められる

ライセンスを取ることで、自分自身の人間性を高めることができます。BFJの指導者資格は「自らの人間性を高める」ことも目的としています

講習会の中では現役のコーチやトレーナー、チームドクターといった様々な立場の人の話を聞くことができます。

広い視野と新しい見識を得る意味でも、ライセンスの取得は自分の人生にとっても有意義になるでしょう。

就職の際に強みになる

ライセンスは就職のときにも役立ちます。特に一次選考が書類のみの場合、ライセンスを持っていると履歴書やESに記載することができ、他の応募者との差別化を図ることが可能です

特に知名度の高いBFJのライセンスなどは野球界の人であれば知っている可能性も高く、スキルのある指導者であることの証明にもなります。

また、ライセンスの所持者は報酬額が高く設定される可能性もあります。もしも希望の報酬額があれば、交渉してみるとよいかもしれません。

スポーツマンシップについて学べる

スポーツマンシップとは、すべての人がスポーツを楽しむために前提となる心構えのこと。他者やルールを尊重することや、勝利を目指して競技に全力で取り組むことなどが挙げられます。

国際的なスポーツの祭典であるオリンピックでは、宣誓文の中にスポーツマンシップの精神が含まれ、選手以外の審判や指導者も共に宣誓を行います。

これまで明確な指導ルールがなかった野球界の指導者がスポーツマンシップを学ぶことはとても大切なことです。

勝利だけを追求する姿勢から、すべての人がスポーツを楽しめる姿勢へシフトすることで、野球界全体の底上げが行われ、野球人口も増えていくことが期待されています

まとめ

野球指導者のライセンスを取得することで、指導者として信頼を得ることができるほか、チーム力の強化にも繋がります。

なぜライセンスが必要なのかを今一度考え、自身のキャリアに活きる選択ができるとよいですね。

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