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小杉 陽太 / Youta Kosugi   元プロ野球選手|現在:株式会社リュニック 代表取締役

戦力外から起業家へ。元DeNA小杉陽太「心を動かす仕事で、ファンとの深い絆をつくる」

“フォロワー10万人!”

街中の広告や、マンガの帯に
そんなうたい文句を目にするように。

インフルエンサーという存在も登場し
フォロワー数は、ひとつのステイタス。

元プロ野球選手の小杉陽太さんも
ツイッターでファンとの繋がりをもちますが
その“数”にはあまりこだわっていない様子。

「フォロワー10万人なら、発信は10万人に届く。
 ただ重要なのは、深いファンがいるかどうか。

彼が大切にするのは、ひとの心でした。

Profile

 

小杉陽太(こすぎ ようた)1985年12月生まれ

元プロ野球選手。2007年にJR東日本へ入社し、1年目から第78回都市対抗野球大会の準々決勝で先発投手を務めるなど活躍。2008年ドラフト5位で横浜ベイスターズ(現:横浜DeNAベイスターズ)に入団。引退後は、式会社l’unique(リュニック)を立ち上げ、代表取締役を務める。

  人の「共感」や「感動」を呼ぶストーリーを届ける仕事

―― 元プロ野球選手から経営者。がらりとキャリアを変えられた小杉さんですが、今はどのようなお仕事をされているのでしょう。

ストーリーを伝えて、ひとの心を動かす仕事をしています。

株式会社l’unique(リュニック)という会社で、イベントの企画・運営、ブランディング、マーケティング、サンプリングなどのPR業務を展開しています。メーカーさんの商品がどうしたら売れるか、このサービスをどう広めようかと考えて、適した方法で世の中に届けていますね。

そのなかで何より大切にしているのがストーリー。 今って商品やサービス自体にはもう大きな差がなくて。圧倒的にいいとか、悪いとかってあんまりないんですよ。じゃあ、どういうときに商品を手に取るかというと、企業やひとの想いに心が動いたときだと僕は考えていて。

担当者の顔が見えたほうが、声が聞こえたほうが、消費者の心にぐっと響きますよね。共感したり感動したり。これからはよりストーリー性を高めていきたいなと考えているので、映像に落とし込んで動画コンテンツもつくっていきたいなと。他にもビジョンはありますが、順を追っていきたいですね。欲張らず(笑)。

―― ストーリーを事業の軸にしようと考えたきっかけがあったのでしょうか。

僕自身、野球をやっていた現役時代から情で動くタイプだったんですよ。つい入り込んじゃうタイプで(笑)。あと、野球選手になりたいと夢を持ったきっかけが、ハマの番長・三浦大輔さんだったんです。三浦さんのプレーに感動したのと同じように、ひとの心を動かせるような仕事をしたい。だから、自然にストーリーが大切になっていたんです。

偽物じゃなく、本物のストーリーを展開することにもこだわっています。商品の開発者、サービスを企画した担当者の想いを、ねじ曲げずに深く伝えること。購買、リピートに繋げることがストーリーの役目なので、増やすべきは「知っている」ひとじゃなくて「大好き」と言ってくれるファンなんです。

―― ファンを増やすなかで、印象的だった出来ごとはありますか?

「セルボナ ミューズリーバー」(以下、セルボナ)というハンガリー生まれのシリアルバーのプロモーションを請け負ったときのことです。予算はそんなに無かったですし、輸入品だから扱いも難しい。さて、どうしようかなと。

ちょうどその時期、お笑い芸人のキングコング西野亮廣さんの著書『革命のファンファーレ』を読んでいて、「SNSは1万人リーチを狙うのではなく、1対1を1万回やれ」と書いていたんですね。ツイッターを始めたタイミングだったので、よし試してみようと思いました。

セルボナをリリースする前から、セルボナに関する記事をツイッターで見つけたらいいねを押したり、小杉陽太、小杉、小杉さんでエゴサーチをしたり、フォローしてもらったら必ずこちらからもフォローバックをしたり、コメントも残して……かなり地道にコツコツとやっていましたね(笑)。

買ってくださいと一方的に言ったところで買ってもらえないと分かっていたので、双方向というか……お互いに繋がっている感覚があるなかでリリースしたほうが、応援してくれるひとも増えるだろうなと。やってみたら実際に反応がよくて。一人ひとり、ひとつひとつに対応することは労力のかかることですが、深いファンが増えると実感できたんです。まさに「1万人リーチを狙うのではなく、1対1を1万回やれ」だなって。

  大学中退。野球からも離れ、物足りない日々を過ごす

―― 一人ひとりに届けることって大切ですよね。では、現役時代のお話もお伺いさせてください。野球との出会いはいつでしたか?

小学6年生のときです。野球部の友人に人数が足りないからと誘われたのがきっかけでした。たまたまホームランを打って「野球って面白いし、簡単なのかもしれない!」って調子に乗ってしまって(苦笑)。中学でも野球を続けて、高校は二松學舍(にしょうがくしゃ)大学附属の野球部に入りました。甲子園常連の強豪校です。

チームプレーの一体感、勝ちに向けての流れや駆け引き、そういう野球の奥深さが大きな魅力でどんどんはまっていきました。体育会で上下関係も厳しかったので、人間性も磨かれていったように感じます。亜細亜大学に進学後も、もちろん野球を続けて。でも、途中でやめてしまったんです。というか、大学を中退して……。

―― 中退ですか!?そのあと一体どうされていたんですか?

原宿のハンバーガーショップで朝から夜までアルバイトして、深夜はバー。奨学金の返済のためと、気を紛らわすために、一日中フルではたらいていました。

というのも、大学に入って怪我が重なって、野球をするよりもリハビリの時間のほうが長くなっていって。その間にも、自分よりレベルの高い仲間がさらに活躍して、その姿を目の当たりにして自信もなくなって。野球に対しての情熱が弱くなってしまったんです。当時は後先のことなんて考えず、やめるという一択でした。

ただ、何をしていてもやっぱり野球のことを考えるし、物足りなくなるんですよね。それで高校時代の監督に頭を下げて、なんとか練習に入れてもらったんです。そうしたらある日、JR東日本野球部の監督から声をかけていただいて。突然だったので驚きました。

あとから知ったんですが、実はその監督、亜細亜大学のときから僕に目をつけてくださっていたみたいで。でも、僕がいきなり大学をやめてしまったので、あいつはどこに行ったんだと。それで、高校で練習していることを耳に入れて、わざわざ足を運んでくださったんです。本当にありがたいことですね。運がいいと思います。

JR東日本入社1年目から
都市対抗野球大会の準々決勝で先発投手に。
活躍の後、22歳で横浜ベイスターズにドラフト指名で入団します。

  チャレンジと改善を重ね、自分を運のいい状態にする

―― ついにプロの世界へ飛び込んだ小杉さん。どのような心境でしたか。

俺、果たしてここでやっていけるのかな……。すぐにそう思いましたね。 一年目で一軍キャンプに参加させてもらえたんですが、先輩たちがブルペンで投げている姿を見てレベルの高さを目の当たりにしました。うわあ、プロってすげえなって。

部活でもJR東日本でも高いレベルでやっていたつもりでしたが、球の速さ、技術、体づくり、考え方、すべてが段違い。でもそれはものすごい数の球を投げて、練習を積み重ねて、何年もずっと身体に染み込ませたからこそ。プロとは努力と継続だと学びました。

2017年10月に戦力外通告を受けて引退をして、その一ヶ月後に起業しましたが、振り返ると僕の野球人生はずっと運がよかったなと思うんです。憧れの三浦選手が所属した横浜ベイスターズで好きな野球を9年間できたこと、高校の監督が練習を許してくれたこと、JR東日本の監督に声をかけていただいたこと。そして、小学生のときに友人が野球に誘ってくれたことも。

―― 運がいい。たとえば、家で寝転んでいても運はやってこないと思うんです。小杉さんが考える、運を引き寄せるコツはありますか?

目の前のひとを好きになることです。それって相手のいいところを見つけることなので、いい関係が構築できるし、それが運をもたらすのかなと思いますね。

それから、今やっていることは無駄じゃないと信じて取り組むこと。もし遠回りをしていても100%の力でやり切ることで、それが巡って、運として帰ってくるのかなと考えています。

あと、僕はチャレンジと変化をよくしますね。自分が続けてきたことや日々のルーティンをがらりと変えることって勇気がいるじゃないですか。投球フォームも、もっと結果を出したいなと思ったら180度フォームを変えて挑戦していました。まずは行動をする。とにかくやってみるんです。

―― 挑戦と行動って少し勇気のいることなので、臆したり恐れたりしてしまいそうですが……。

僕、恐れないです。やりたいと思ったことだったらなおさらですし、やらなかった事実が後悔となって残ってしまうほうが恐ろしいですね。起業もそうです。

引退後、どこかの会社に就職して、まず2、3年修行する道もあったと思います。 でも、経営に関する発想やノウハウはやっぱり会社を立ち上げないと得られないなと。経営するなかでさまざまなひとに会って話を聞いて、吸収して、事業に落とし込むほうがスピード感のあるやり方だと思ったんですね。あくまでも僕の考えですが。

やりたい事業があるけれど、利益が少ないからやめておこうとは思いません。 まずやってみて、課題を解決するために筋道を立てていくのが好きだし、得意なんです。挑戦したい気持ちを大切にして、行動しながら改善していく。そうして自分を運のいい状態にしながら、夢を叶え続けていきたいですね。

  支えてくれるひとたちに還元する会社でありたい

―― 冒頭でストーリーを通してファンを増やすとおっしゃっていました。工夫や意識をされていること、ぜひ教えてください。

距離を近くすることです。
元プロ野球選手だからと変なプライドを持たず、自分から接点をつくる。ファンとの関係を密度高いものにしていく。ファンの方からSNSでメッセージをもらって飲みに行くこともありますね。そこでいただく意見って参考になるんです。

ただ、SNSのフォロワーはファンの数じゃなく、認知の数だと捉えています。フォロワーが10万人いるなら、何かを発信したときに10万人に知ってもらうことはできる。でも重要なのは、行動に移してくれる深いファンがどれだけいるかですよね。数よりも質。だからこそ、距離感を縮めることは大切なんです。

それから、横浜ベイスターズがDeNAの運営になったことも、僕にとってひとつのターニングポイントでした。チームにとって低迷期が続いていたなか、いろいろなアイディアを打ち出してファンの心を掴んで、観客動員数をどんどん増加させていったんです。赤字から黒字に向かうグラフを見たときに「これってすげえなぁ。」と思いました。

ファン参加型のイベント、プラチナチケット、女性向けのガールズフェスティバル、試合内容に満足できなければ全額返金。戦略的にいつも面白いことを仕掛けていて。そうやってファンを増やし続けたDeNAのビジネスを近くで見られたことは、今の僕の仕事にも間違いなく活きていますね。

―― 横浜ベイスターズでの経験、野球をやっていたという経験が、今にしっかりとつながっているんですね。小杉さんのこれからの目標は何でしょうか?

リュニックを上場させることです。会社を「結果」として見えるようにするためにも。結果にたどり着くまで頑張ったことも評価されるかもしれませんが、世の中にはそのプロセスって出ませんよね。野球もそうですが、仕事も、結果にこそ意味があると思っていて。周りに納得してもらうためにも、認めてもらうためにも。

上場して会社も僕自身も突き抜けることで、プロ野球選手たちの次のステージとして実例をつくりたいんです。元プロ野球選手が経営者になって上場したとなれば、引退後も道があることを示せるし、現役選手たちの不安を拭えるかもしれない。彼らの選択肢も増やせるんじゃないかと思って、どこかそんな使命感を持っています。

かっこいい言い方をすれば後輩のため。誰にも頼まれていないんですけどね(笑)。野球では支えてくれるファンがいて、今はお世話になっているクライアント、ユーザーの皆さんがいて。そのひとたちに何かを還元できる会社であれるように。

綺麗ごとかもしれません。仕事は綺麗ごとだけじゃないと理解もしています。でも、やっぱりストーリーを通してひとの心を動かし続けたい。これからもその想いを持ってファンを増やし、大切にしていきたいです。

  取材後記

圧倒的な“数”を武器にする。
地道にコメントをして、ファンとの絆を深める。
戦い方は、ひとそれぞれです。

ただ、そのなかで忘れたくないことは

SNSも仕事も、その先にはいつだって
血の通った、感情のある
「一人のひと」がいるということ。

ハマの番長に心を動かされた野球少年は
今、経営者としてファンの心を動かしています。

 

取材・文/榧野文香


小杉陽太 ツイッター
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