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松下 一郎 / Ichiro Matsushita   元プロ野球選手|現在:IT企業勤務

10年後も必要な人財であるために

松下さんはこんな人

東京駅の目の前、一等地、丸ノ内。
見上げるほどの高いビルにオフィスを構える、世界有数のIT企業。

そこが今回の取材場所。
ビジネスアスリートの職場です。

ピシッとしたスーツをまとう彼は
小学生からずっと、中学も、高校も、大学も、野球。
ユニフォームを脱いだ今、いったい何を思っているのでしょう。

Profile

 

松下一郎(まつした いちろう)1988年7月生まれ

元プロ野球選手。2010年のドラフト会議で横浜ベイスターズ(現:横浜DeNAベイスターズ)の育成1位指名を受け入団。キャッチャーを務め、2014年からは同球団のブルペン捕手へ転身。現在は、株式会社セールスフォース・ドットコムにて営業の仕事に励む。兵庫県出身で、時折の関西なまりと明るい口調が印象的。

  肩、がっしりされていますね!昔からキャッチャーをされていたんですか?

そうですね、コーチの指示で小学生からずっとキャッチャーをやっていました。小学3年生から始めたんですが、その頃からすでに肩が強いほうで。プロになるまでずっと野球部。家族との会話もほとんどが野球。人生まるっと野球ですね(笑)

  一筋ですね(笑)早い段階からプロ選手になるイメージもあったんしょうか?

もちろんプロは憧れですし、ずっと目指していました。ただ、僕、高校も大学も受験で入学したんですよ。スポーツ推薦はいくつかもらっていましたが、文武両道でやりたかったのですべて断っていたんです。

プロ野球選手という夢を持ちながら、どこか現実的な視点もあったんだと思います。 少しずつ自分の実力が分かってくるし、野球は大好きだけれどそれだけじゃないなって。勉強もおろそかにせず、大学受験を考えて高校を、就職を考えて大学をと、常に先を見据えた選択をしていましたね。

  学生の頃から冷静な視点、立派ですね。

大学でプロの話が出たときもそうでした。ドラフト会議の当日までどうなるか分からないと思って、就活も真剣にやっていたんです。ドラフトで指名されて入団が決まったらそっちに行くという条件で内定をもらって、内定式も出席して(笑)結局、無事に横浜ベイスターズの育成1位指名を受けることができました。

  内定式を経験したプロ選手、なかなかいないと思います(笑)入団後、どんなことを考えてやっていましたか?

僕、阪神でキャッチャーをしていた矢野燿大(やの あきひろ)選手が好きだったんですよ。キャッチャーにもぐいっと引っ張るタイプと支えるタイプがいるんですが、僕はどちらかというと後者で。

矢野選手の仲間を活かすようなプレーと、マスクを外したときの安心感があふれる笑顔がめっちゃいいなって。だから僕も、「松下がいるなら大丈夫だ」って周りがほっとするような選手を目指していました。

でも、プロの世界はやっぱり厳しくて……怒られる日々でしたね。頭では分かっているのに上手くできない、その繰り返しでした。レベルの高い選手に囲まれて、自分の技術が追いついていかない。それがものすごく苦しかったです。入団して2か月経った頃には円形脱毛症にもなりました。

― 仲間想いのキャッチャーとして活躍されたものの、3年目に戦力外通告。翌年から、ブルペンキャッチャーに転身されます。

最初はものすごくショックでしたね。ただ、絶対的にプロになれるとは言えなかった僕がちゃんとプロになれて、素晴らしい環境でプレーする野球は本当に、めちゃくちゃ楽しかった。そういう経験ができたから、次は裏方で支えようと思えたんです。プロになる前、裏方の仕事にも少し興味を持っていましたしね。

ブルペンキャッチャーは3年務めました。もともと3年後に進路を見直すと決めていたんです。ブルペンキャッチャーって職人みたいなもので、10年、20年、技術を磨きながらコツコツと続けられる仕事なんです。

ただ、契約更新は1年ずつ。新しい仕事を見つけるのが厳しい年齢、たとえば40歳、50歳で契約終了となる可能性もゼロではありません。社会人としてまだ足りていないスキルを身に付けておくためにも、色々なことにチャレンジしたいという気持ちもありました。

ブルペンキャッチャーとして野球に携わる毎日は楽しかったです。でも、帰宅して今日の自分はいったいどう成長したかなって考えると、首をかしげてしまうことも多くて。しっかりと結果を出せて、もっと成長が見える仕事をしたいなって。2016年の12月、28歳のときに完全に野球界から去りました。

  そうしてセールスフォース・ドットコムに入社されたんですね。

ブルペンキャッチャーの現実を見ていたので、3年目の27歳くらいから転職活動も行っていました。本当に一般的な方法ですよ。転職サイトやエージェントに登録して、エントリーシートを書いて、面接して。セールスフォース・ドットコムは『世界で最も革新的な企業』に数年連続で選ばれていて、何だか面白そうだなって思ったんです。3年目の27歳

でも、エージェントの方に「これまで野球しかやっていないので、ここは受からないです」とバッサリ切り捨てられて、違う企業を推薦されたんです。いや、挑戦してみないと分からないだろうって思ったので、自分で直接応募しました(笑)選考はやっぱり厳しくて、面接だけでも3回ありましたね。入社したかったので、たくさん勉強して臨みました。

アスリートとして培った忍耐力や諦めずにやり切る力と、ビジネスの経験をしっかりかけ合わせて、5年、10年後に必要な人財になりたかったんです。セールスフォース・ドットコムは目標達成意識がとても高い企業。そんなエネルギッシュな環境で、しかもITという確実に伸びていく分野でビジネススキルを学びたかったんです。未来の自分のためにも。

  やはり先を考えた、真っ直ぐな選択ですね。野球やキャッチャーの経験で仕事にも活きていること、教えてください。

僕は自分から人に歩み寄ることが得意なので、選手時代から色んな人と臆さずにコミュニケーションをとるよう意識していたんです。野球がものすごく上手ではなかったけれど、周りとの会話は多かったですし、学ぶことも可愛がってもらうこともありました。

もちろん技術を磨くことが第一でしたが、誰もが上手いのがプロの世界。だからこそ、自分にしかない「強み」「個性」を活かすことも必要だったんですよ。その頃に意識していたコミュニケーション方法は今も大切にしていますし、会社というひとつの組織で人と打ち解ける力はあると思います。

あと、これは野球の特性かもしれませんが、試合に勝つとピッチャーが称えられて、負けるとキャッチャーが叩かれがちなんです。学生の頃は「俺のプレーも褒めてくれ」なんて思っていました(笑)でもそれって違って。ピッチャーって本当、計り知れないほど大きなプレッシャーを背負って投げているんですよ。だから、いかにその重圧を汲み取って、いい球を投げられるようにするか。キャッチャーってそういう役割だなって。

勝ったらピッチャーの活躍、負けたらキャッチャーとして仕事を果たせなかった自分の責任。その思考は染み付いていますし、ビジネスの世界でも活かせています。相手を尊重する心と、責任感ですね。

  ビジネスアスリートの松下さんが思う、スポーツ業界と一般社会とでの違いって何でしょうか?戸惑ったことなど、ありましたか?

まず、PDCAの回し方です。野球ならそれが分かっているし行動にも移せるんです。この失敗を無くすためにこういう練習をしよう、と。でも、ビジネスとなるとまったく勝手が違って、課題に対して何をすべきなのか判断がしづらいんです。本を読むことなのか、人に会って話を聞くことなのか、チャレンジして当たって砕けることなのか……。正直まだ掴めていなくて。経験を積んで学んでいきたいですね。

あと、会社っていうのは本当にさまざまな人がいますよね。スポーツだとみんなで同じ目標を持ちますし、競技という共通点が絶対的にありますが、会社という色んな人が集まる組織ではそう簡単にはいきません。弊社は目標意識の高い人が多いので同じ方向を見て仕事ができていますが、一般的にはそういう大変さがあるんじゃないかなって思います。

  後輩の野球選手たちへ、将来に向けてやっておくべきことなどのアドバイスをぜひお願いします。

人に興味を持つことです。それも、出来る限り深い興味を。実際、僕が現役時代にずっとやっていたことなんですよ。プロ野球界って経営者などビジネスの世界で活躍されている方との繋がりが結構あって、ありがたいことに。

僕はその方に興味を持って、なぜその人が社長になれたのか、どうして今の仕事やビジネスをしているのかなど深い部分を聞いていました。そうすると「お前、なんか面白いな」と可愛がってくださって。野球を離れてからもアドバイスをくださったり、相談に乗っていただいたりしています。

野球界は人と出会えるチャンスが多い業界。せっかく知識を得られる機会があるので、もし引退することへの不安があるのなら、その機会を大切にしてみてはどうでしょうか。野球に全力投球しながら、目の前の人や外の世界に少しずつ触れてみる。そこから始めてもいいんじゃないかなって思います。

  取材後記

やわらかな物腰で、言葉ひとつひとつに説得力のある松下さん。
でも実は、ビジネスの世界に出てまだ10ヶ月。セールスマンとして奮闘中。
それを感じさせない落ち着きは、きっと、野球を通して多くを経験し、考えてきたから。

安心感のあるキャッチャーを目指した松下さんは、
安心感のあるビジネスマンへ。おそらく、これからもっと。

「今はとにかく結果を出して、力を付けていきます。
お客さまの課題解決に尽力して「松下さんが担当でよかった」と言われるセールスマンになります。お客さまを成功に導くような仕事をしたいですね。」

彼のこれからに、まだまだ目が離せません。

 

株式会社セールスフォース・ドットコム
https://www.salesforce.com/jp/

取材/アスリートエージェント 小園翔太
取材・文・編集/榧野文香

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